商標関連情報
「COCO」(香水) 美容、理容等に使用しても混同しない
事件の表示 異議2016-900238
確 定 日 平成29年(2017)2月13日
主な関連規程 商標法第4条第1項第15号
事案の概要
「COCO」を要部とする商標(下記)が、「美容,理容,まつ毛エクステンションの施術」等について商標登録された。これに対して、「COCO」又は「ココ」の商標を香水に使用して周知なものとしてきた者が、混同を生じることを理由として、その取消しを求めて、異議申立をした。
本件商標
指定役務
第44類 美容,理容,まつ毛エクステンションの施術,マニキュア又はつけ爪による美容 等
引用商標1
COCO
指定商品
第3類 化粧品,香料類
引用商標2
CoCo
指定商品
第3類 化粧品,香料類
結 論
本件商標の登録を維持する。
理由(要旨)
(1)引用商標の著名性について
申立人は、香水等の化粧品をはじめ、高級婦人服、ハンドバッグ、靴、アクセサリー、時計等の製品の製造販売を業とするトータルファッションメーカーであり、申立人がその業務に係る商品に使用する「CHANEL」及び「シャネル」の表示が、世界的に知られていることは周知の事実といえるところ、申立人の業務に係る商品のうち、香水について使用される商標「COCO」又は「ココ」は、申立人の創業者である「ガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)の愛称に由来していること、「COCO」を付した香水は、1984年にパリで発売され、我が国では、1985年9月に発売が開始されたところ、その発売開始の前後を通して、多数の新聞、ファッション雑誌等で掲載されたこと、又、「COCO」シリーズの香水も発売されたこと等の事実から、「COCO」又は「ココ」の文字は、香水の分野の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認め得る。
しかしながら、提出された証拠からは、香水以外の商品について取引者、需要者の間に広く認識されている事実は見いだせない。
そうすると、申立人商標の周知性は、「香水」を取り扱う分野である「化粧品」の範囲にとどまるものというのが相当であり、その分野を超えて、本件商標の指定役務の需要者にまで、広く知られていたとは認め難い。
(2)本件商標と引用商標との類似性
ア 本件商標
本件商標中「COCO」の文字部分は、独立して役務の出所識別標識としての機能を有するものといえ、本件商標から、単に「ココ」の称呼を生ずる。そして、「COCO」の文字は、「ココヤシ、ココヤシの実」などの意味を有する英語であるから、「ココヤシ、ココヤシの実」の観念を生ずる。
イ 引用商標を構成する「COCO」及び「ココ」の文字部分は、商品「香水」との関係において、申立人の業務に係る商品であることを表示する標章として、我が国の香水の分野の取引者、需要者の間に広く知られた商標といい得る。引用商標に接する取引者、需要者は、申立人の香水のブランドの観念を想起する。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とは、観念において類似しないものであるが、称呼を共通にし、外観も近似したものであるから、これらを総合して観察すれば、両者は類似の商標といえる。
(3)出所混同のおそれ
引用商標は、「香水」を取り扱う分野である「化粧品」の範囲においては、周知、著名であるといえるが、その分野を超えて、本件商標の指定役務の分野の需要者にまで広く知られているとは認め難い。
そうすると、本件商標と引用商標とが、類似の商標であったとしても、該「COCO」の文字が、「ココヤシ、ココヤシの実」などの意味を有する既成の英語であることも勘案するならば、本件商標は、その指定役務に使用しても、引用商標を想起、連想するものとはいえず、その出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
平成29.03.31発行「審決」より 2017.5.24 ANDO