商標関連情報
「N」「NB」(図) 「IN」(図)は混同しない
事件の表示 異議2016-900246
確 定 日 平成29年(2017)2月16日
主な関連規程 商標法第4条第1項第11号
事案の概要
「IN」をモチーフとした図形とその下段に「Individual Need」の欧文字を表示した商標(下記)が、「被服、履物及び運動用特殊靴」等について、登録された。これに対して、「N」をモチーフとした図形商標及び「NB」をモチーフとした図形商標を靴類等について登録し、使用している者が、次の理由で類似する旨を理由として、登録の取消を求めて、異議の申立てをした。
(異議申し立ての理由の要旨)
(1)本件商標と引用商標の外観の特徴の共通点
本件商標は、需要者の注意を惹く要部は、「N」の図形部分である。この図形部分は、「I」と「N」とが一体的な印象を与え、全体として欧文字「N」のごとき形状である。そこえ、4本の白い帯の存在により商標の左側に黒と白の交互縞模様を表出する。
これに対して、引用商標は、太字かつ右斜体で表され、商標の左側に黒と白の交互縞模様を表出し、それぞれ欧文字「N」の形状が特徴的である。
したがって、本件商標と引用商標の外観の特徴の共通点は多い。
(2)引用商標の周知性・著名性について
商標左部に右方が太く左方に行くほど細くなるように表現された黒と白の交互縞模様が存在するといった特徴において、需要者に相当程度知られた商標であり、使用に基づく一定以上の業務上の信用を獲得している。
(3)商標の類否判断について
本件商標は、引用商標の商標権者の周知・著名商標の特徴を抜き出し、これらを巧妙に組み合わせつつ、ある種のキャッチコピーのごとき文字部を付け加えているが、要部観察ならびに離隔観察を考慮すれば、本件商標は引用商標の類似する。
本件商標
指定商品
第25類 被服及び運動用特殊被服,履物及び運動用特殊靴,帽子 等
引用商標1
指定商品
第25類 被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,乗馬靴
引用商標2
指定商品
第25類 被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴 等
第35類 被服の小売り役務,履物の小売り役務,運動具の小売役務
結 論
本件商標の登録を維持する
理由(要旨)
(1)引用商標の周知性について
申立人は、靴類,被服類,運動用具類に、主として引用商標2を使用したことが確認できる。また、2015・2016年発行の雑誌及び新聞において、主として引用商標2を使用した「靴類」の宣伝広告がされている。
しかし、商品カタログの配布部数や配布地域が把握できず、商品の販売数、販売額、業界におけるシェアなども明らかでない。さらに、「スポーツブランドに関する調査」は1年以内にスニーカーを購入した者、月に1回以上スポーツを実施している男女を対象としたものであり、これらは、そこに付されたブランドを目にする機会が比較的多い者であり、一般の需要者の間における引用商標の周知性を推し量る調査としては客観性に欠ける。
したがって、引用商標が、靴類、被服類、運動用具類に使用されて、これらの商品の一般の需要者の間で広く認識されているということはできない。
(2)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標の上段部分と引用商標1を比較するに、本件商標の上段部分は、「I」及び「N」をモチーフとし、左側に横長矩形状の切欠きを水平に等間隔に四つ施してなるものであるのに対し、引用商標1は、太字で斜めに表した欧文字の「N」の文字の左端から右端近くにかけて、右側を尖らせた楔状の切欠きを水平に等間隔に七つ施してなるものであるから、両者は基調となる文字において「IN」と「N」という相違があり、横に施された切欠きの数と形状の違いにより、外観上たがいに区別し得る差異を有する。
したがって、本件商標の上段部分と引用商標1とは、外観上類似しない。また、両者は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから、称呼及び観念において相紛れるおそれはない。
(3)本件商標と引用商標2との類否について
引用商標2は、欧文字の「N」と「B」とをモチーフにしたモノグラムを斜めに表してなり、「N」部分の左端から右端にかけて、右側を尖らせた楔状切欠きを水平に等間隔に四つ施してなるものであるから、本件商標の上段部分と引用商標2とは、基調となる文字において「IN」と「NB」という相違があり、横に施された切欠きの形状の違いにより、両者は外観上区別し得る差異を有する。したがって、本件商標の上段部分と引用商標2とは、外観上類似しない。また、両者は、いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから、称呼及び観念において相紛れるおそれはない。
平成29.03.31発行「審決」より 2017.5.26 ANDO