商標関連情報
「直虎」(大河ドラマ) 「直虎」の文字が「井伊直虎」と特定できない
異議申立番号 異議2016-900223
確 定 日 平成29年(2017)4月1日
主な関連規程 商標法第4条第1項第7号
事案の概要
「直虎」なる商標が、みそ、調味料、米 等について商標登録された。これに対して、浜松市及び浜松商工会議所が本件商標の登録は、次の理由で、取り消されるべきであるとして、異議申立てを行った。
(異議申立ての主な理由)
「直虎」の文字は、1540年頃(推定)に遠江(現在の静岡県西部、浜松)に生まれ、「徳川四天王」と称され、徳川幕府の基礎づくりに貢献した井伊直政の義母であり、一生涯を浜松で過ごし、井伊直政を支え、戦国時代を生き抜いた歴史上の女性として広く知られている「井伊直虎」を表すものであり、静岡県浜松市浜松商工会議所等が同人の名称を観光振興や地域おこし等の施策に利用している。
本件商標の登録は、著名な歴史上の人物の名称に便乗し、指定商品についての使用の独占をもたらし、直虎の名称を使用した観光振興や地域おこしなどの公益的な施策の遂行を阻害することとなり、社会公共の利益に反する。
本件商標
直 虎 (標準文字)
指定商品
第30類 みそ,調味料,香辛料、アイスクリームのもと,穀物の加工品,米 等
結 論
本件商標の登録を維持する。
理由(要旨)
(1)「直虎」の文字の周知性について
「直虎」職権調査によれば、「直虎」の名を持つ歴史上の人物としては、「井伊直虎」のほか、備前小城藩の第11代藩主の「鍋島直虎」及び信濃須坂藩の第13代藩主の「堀直虎」の2名が確認できるので、「直虎」の文字が、「井伊直虎」の名を表すものと特定することはできない。
浜松市において、循環バスの車体へのラッピング、浜松市のウェブサイトへのPRロゴマークが決定した旨の掲載、公共施設や大型商業施設への懸垂幕等の設置等がなされたが、その実情の多くは、本件商標の登録査定の日前において、浜松市及びその近隣において活動及び広報等がされていたにとどまる。
浜松市における上記の実情の他、セミナーの開催、書籍、読本、及び数件の新聞記事情報があるが、これらをもって、「直虎」の文字が、本件登録査定時に、「井伊直虎」を表すものとして広く知られていたということはできない。
(2)「直虎」の文字を本件商標権者が使用することが公益的施策の遂行の阻害、公共の利益に反するか否かについて
平成29年のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の文字は、国内において急速に周知度が高まることは想定されるものの、提出された証拠においては、「直虎」の文字のみで表示されているものは、見当たらない。そうすると、本件商標の登録査定時において、「直虎」の文字が、地域おこしなど公益的な施策等に広く使用されていたということができない。
また、たとえ「直虎」の文字が商標登録されたとしても、該文字は、歴史上の人物の名称である「井伊直虎」はもとより、浜松市が使用する、図形と「直虎 ゆかりの地 浜松」等の表示とは別異のものというべきであるから、同市等がこれらを表示して行う公益的な施策等の遂行の妨げになるものでもない。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性
「直虎」の文字が、「井伊直虎」の名を表すものとして、広く一般に知られたものであるということができず、本件商標権者が「直虎」の文字を本件指定商品について使用をすることが社会公共の利益に反するものと認めるに足る事実は見当たらない。
よって本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(注:商標「直虎」,指定商品 第30類 「茶,せんべい,菓子,パン,サンドイッチ」 等の登録について、同様の審決(異議申立番号 異議2016-900222,確定日 2017.4.1)
平成29.5.26発行「審決」より 2017.6.14 ANDO