商標関連情報
「ASKUL」 周知性は「オフィス用品通販」分野に止まる。
異議申立番号 異議2016-900388
確 定 日 平成29年(2017)4月7日
主な関連規程 商標法第4条第1項第8号,同項第11号,同項第15号
事案の概要
「半島プラザアスクル」なる商標(本件商標)が、第35類(織物及び寝具類の小売り役務 等)及び第41類(演芸の上演 等)を指定役務(下記)として登録された。
これに対して、「ASKUL」なる商標(下記引用商標1ないし4)を商標登録し、文具・事務用品を中心とするオフィス用品の通信販売を行っている者が、次の理由で、その登録の取消し求めて、異議申立を行った。
(異議申立の理由の要旨)
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標の要部は、「アスクル」の部分であるから、引用商標とは、称呼が共通しており、外観、称呼、観念を総合的に判断すると、相紛らわしい類似の商標である。
(2)商標法第1項第15号該当性について
「アスクル」ないし「ASKUL」は、申立人が通信販売業務において提供する役務を示す商標として著名であり、申立人の営業標識として使用しているハウスマークでもある。申立人は、様々な業種の法人から個人までを対象として、サービスを提供していることに鑑みると、本件商標が使用された場合、出所の混同を生じる。
(3)商標法第4条第1項第8号該当性について
「アスクル」は、申立人の略称を示すものとして、新聞記事等において繰り返し用いられており、一般に受け入れられている。本件商標は、申立人の著名な略称「アスクル」を含んでおり、申立人の同意を得ていない。
本件商標
指定役務
第35類 トレーディングスタンプの発行 等,織物及び寝具類の小売り役務,酒類の小売り役務,菓子及びパンの小売り役務 等
第41類 演芸の上演、音楽の演奏、興行の企画・運営・又は開催 等
引用商標1
ASKUL (標準文字)
指定役務
第1類ないし第12類,第14ないし第42類
引用商標2及び3
指定役務
第35類 飲食料品の小売り役務,台所用品の小売り役務 等
引用商標4
音商標:男性の声で「アスクル」と聞こえる構成となっており、全体で約1秒間の長さである。
指定役務
第35類 織物及び寝具類の小売り役務,被服の小売り役務,飲食料品の小売り役務,酒類の小売り役務,電気機械器具の小売り役務,紙類及び文房具類の小売り役務 等
結 論
本件商標の登録を維持する。
理由(要旨)
1 引用商標の周知・著名性について
申立人は1993年に業務を開始した、法人向けのオフィス用品通信販売を主力業務とする企業であって、引用商標を使用していること、現在は70万点以上のオフィス用品全般を取り扱っており2016年5期の売上高は、3150億円に達し、「業界ナンバー1の売上げを誇るオフィス通販」となっていることなどが認められる。これらの事実から、引用商標の文字は、申立人に係る文具・事務用品を中心とするオフィス用品の通信販売業務において申立人又は申立人の業務を表示するものとして、その分野の取引者・需要者の間においては広く認識されている。
しかしながら、申立人提出の証拠によっては、引用商標の周知・著名性は、オフィス用品の通信販売の分野にとどまるものというのが相当であって、その分野を超えて、広く知られていたとは認められない。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、各文字について軽重の差を見いだせず、いずれかの文字部分が出所識別標識として支配的な印象を与えるものと認められない。してみれば、本件商標は構成全体をもって一体のものとして認識され、「ハントープラザアスクル」の一連の称呼が生じ、特定の観念は生じない。
(2)本件商標と引用商標1、2及び3との類否
本件商標と引用商標1,2及び3とは、外観及び称呼において相紛れるおそれはなく、観念においては、いずれも特定の観念を生じない比較することはできないものである。よって、本件商標と引用商標1、2及び3とは非類似の商標である。
(3)本件商標と引用商標4との類否
引用商標4は、「アスクル」と発音される言語的要素のみからなる音商標であって、「アスクル」の称呼を生じ、特定の意味合いを生じさせるものではない。両商標の称呼は、明瞭に聴別し得るものである。また、特定の観念を生じないものであるから、観念上相紛れるおそれはない。したがって、本件商標と引用商標4とは、非類似の商標である。
(4)そうすると、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、通信販売業務においては広く知られている。しかし、本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。そうすると、本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者・取引者が申立人商標を想起するものとはいえず、その出所について混同を生じるおそれがあるものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第8号について
「アスクル」の文字は、オフィス用品の通信販売の分野においては、申立人の略称を表すものとして認識されているものと認められるが、該文字が申立人を指称するものとして一般に認識されるに至っていたものとは認められない。
してみれば、本件商標は、その構成中に他人の著名な略称を含むものということはできないから、商標法第4条第1項第8号には該当しない。
平成29.5.26発行「審決」より 2017.6.21 ANDO