商標関連情報
「ELIXIR」(化粧品) 「L’ELIXIR」は1つの単語
種 別 異議の決定
異議申立番号 異議2016-685023
確 定 日 平成29年(2017)3月8日
主な関連規程 商標法第4条第1項第11号、同項第15号
事案の概要
フランス国における登録出願に基づいて日本国に出願された商標「L’ELIXIR D’ORIENT」(下記本件商標)が、香水、化粧品等について国際登録された。これに対して、「ELIXIR/エリクシール」と称する化粧品を販売し、周知となって商標を登録している商標権者が、その登録の取消しを求めて、異議申立を行ない、次のように主張した。
(異議申立ての主張の要点)
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、申立人の使用に係る引用商標にフランス語の定冠詞「Le」の短縮形である「L’」と商品の産地、販売地を表示するにすぎない「D’ORIENT」の文字を付加したものであり、取引者、需要者をしてその構成中の「ELIXIR」の文字部分のみが抽出されやすい。本件商標は商標全体として、引用商標と同一又は類似する。したがって本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
申立人は、1872年に創業された我が国初の洋風調剤薬局を前身とし、1927年の株式会社として設立された。申立人がELIXIRブランドによる事業展開を開始したのは1983年であり、同ブランドは、化粧品全般の商品群から構成される商品に使用されている。
本件商標は、著名商標である引用商標と同一の文字列を含んでいることが瞬時に認識されるものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、申立人の業務の係るものであるかのように混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
本件商標
指定商品
Perfumes,toilet waters; bath and shower gels and salts for non-medical use 等
引用商標1
エリクシール
指定商品
第3類 せっけん類、歯磨き、化粧品 等
引用商標2
エリクシール/ELIXIR (上下二段書き)
第3類 せっけん類、歯磨き、化粧品、香料類
指定商品
第3類 せっけん類、歯磨き、化粧品 等
引用商標4
ELIXIR (標準文字)
指定商品
第3類 化粧品、せっけん類、香料類、歯磨き
結 論
本件商標の登録を維持する。
理 由(要旨)
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標は、その構成全体がまとまりよく一体的なものとして表されている。「レリクシールドリエント」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得る。また、一種の造語を表したものと看取、理解され、特定の観念を生じない。
イ 本件商標の「L’」は、フランス語の文法上、冠詞「Le」の母音字「e」を省略して代わりに「’ 」を表示し、後ろに来る語と結び付けて、1つの単語として称呼するものであるから、フランス語を理解している者であれば、当該「L’ELIXIR」の文字から「L’」を分離して、「ELIXIR」の文字部分のみを1つの単語として認識するということはないし、また、フランス語を理解していない者であっても、それを構成する各文字が同じ大きさ及び書体の全角で、等間隔に表されているから、「L]と「E」との間に「’ 」があるからといって、「l’」と「ELIXIR」とを分離して看取するとはいい難い。
また、「D’ORIENT」が、商品の産地を表したものと認識されない。
イ 引用商標3は、「ELIXIR/エリクシール」と称する化粧品について少なくとも1984年から1999年までの間使用していたことが認められ、売上げに係る金額および数量も相当数に及んでいた。そうすると、引用商標3は、「ELIXIR/エリクシール」と称する化粧品に使用される商標として、一定程度認識されていると推認されるが、特定の観念を生じるとまではいい難い。
ウ 本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの面からみても相紛れるおそれのないものであり、非類似の商標である。
エ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標は、1983年から2016年までの間引用商標を使用し、多額の費用を投入した当該化粧品について宣伝広告がされ、その売上げに係る金額及び個数も相当に及んでいた。
しかしながら、本件商標は、その構成中の「ELIXIR」の文字部分のみが着目され抽出されるとはいえないものである。本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、十分に認識できるものである。
イ 本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想、想起して、商品の出所のついて混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
平成29.5.26発行「審決」より 2017.7.3 ANDO