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商標関連情報

審決

マジックインキ(マーカー) 塗料の分野では著名でない

異議申立番号 異議2016-900390
確 定 日  
平成29年(2017)4月28日

主な関連規程 商標法第4条第1項第15号、同項第19号

事案の概要
「MAGIC SPRAY」なる商標が、「スプレー式塗料」等を指定商品として、登録された。これに対して、「マジック インキ」なる商標で「マーカー、フェルトペン」等の商品を永年にわたって販売し、著名になっている商標権者が、登録の取消しを求めて、異議の申し立てを行い、次のように主張した。
(異議申立ての主な主張)
引用商標は、「どんなものにもよく書ける」というこれまでにない新しい筆記具ということから、日本初のマーキングペンの名称を「魔法のインキ」という意を込めて、「マジックインキ」と命名した。
「マジックインキ」、「マジック」の商品は一般事務のみならず、水産業者・青果業者の現場、家具・カメラ部品などの塗装補修用、製靴業者の皮革の染め用等にも使用されるようになっている。
本件商標の指定商品は、塗料を取り扱う店舗において取り扱われるものであるが、引用商標の指定商品も文房具の域を超えた幅広い使用がなされている。
本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者が、普通に払われる注意力を持ってして、周知著名な商標である引用商標を連想・想起して、これらの商品が申立人・使用権者と何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認するおそれがある。
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
引用商標と要部が同一の標章を採択したことは、本件商標の商標権者が引用商標の名声及び信用にただ乗りしようとする意図があったからと推定される。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反してなされたものである。

本件商標

MAGIC SPRAY (標準文字)

指定商品
第2類 スプレー式の塗料,スプレー式の顔料,スプレー式の塗料,スプレー式の防錆グリース

引用商標1
JPJ7428900390_000001

指定商品
第2類  印刷インキ,謄写版用インキ
第16類 文房具類

引用商標2

JPJ7428900390_000002

指定商品
第16類 インキ

引用商標3

JPJ7428900390_000003

指定商品
第16類 インキ

引用商標4

JPJ7428900390_000006

指定商品
第16類 フェルトペン

結  論
本件商標の登録を維持する。

理  由(要旨)
1 引用商標の周知・著名性
「マジックインキ」、「Magic」、「マジック」の文字を要部とする引用商標を、製造、販売元である使用権者が「マーカー,フェルトペン,補充用インキ」に、1953年から使用し、カタログ、新聞、雑誌、ウェブサイト記事などの媒体や実演販売などを通じて、宣伝・広告をした結果、取引者・需要者の間に広く知られていた。
しかしながら、「マーカー,フェルトペン,補充用インキ」などの商品の範囲を超えてまで著名性を獲得していたと認めることはできない。
2 本件商標と引用商標との類似性
本件商標の構成中「SPRAY」の語は、「液体を霧状にして吹き付けること」等の意味を有するものであって、指定商品との関係においては、商品の機能表示と認識されるから、自他商品識別としての機能を果し得ない。してみると、本件商標は、その構成中、前半の「MAGIC」の部分に着目して、「マジック」の称呼及び「魔法」などの観念をもって取引にあたることも少なくない。したがって、引用商標とは、外観、称呼及び観念において類似することがある。
3 本願商標の指定商品と引用商標の指定商品との関連性
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、商品の用途、目的、性質、品質等において著しく相違するばかりか、商品の生産者、流通系統、販売場所などにおいても明確に相違する。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標の周知性は、「マーカー,フェルトペン,補充用インキ」などの商品に限られるものであって、その商品の範囲を超えて、我が国の需要者の間に広く認識されていたとまでは認めることはできない。
また、「MAGIC」、「マジック」の文字は、「魔法」などの意味を有する一般に親しまれた既成語であり、顕著な特徴を有する創造標章ということはできない。
そして、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、商品の生産者、流通系統、販売場所などにおいても明確に相違するものであり、関連性が強いとはいえない。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用しても、申立人・使用権者と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想・想起することはなく、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標と引用商標とは、類似の商標といえるものであるとしても、「MAGIC」、「マジック」の文字は、一般に親しまれた語であり、顕著な特徴を有するということもできない。
また、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品とは、商品の生産者などについて明確に相違するものであって、本件商標が引用商標の顧客吸引力にただ乗りしたり、不当に利用するなど、不正の目的をもって使用するものであることを具体的に示す証拠も見当たらない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたということはできない。

平成29.6.30発行「審決」より 2017.8.4 ANDO

 

 

 

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