商標関連情報
「極真会館」(空手の教授) 出願の経緯に社会的相当性を欠く 登録無効
事件の表示 無効2014-890093
確 定 日 平成29年(2017)6月19日
主な関連規定 商標法第4条第1項第7号
事案の概要
「極真会館」(下記)は、空手の流派の団体「国際空手道連盟極真会館」の略称として周知であるところ、当該団体の創始者倍達氏の死後に同団体が分裂した状況下において、倍達氏の三女が、この略称を「空手の教授」等を指定して、商標登録した。
これに対して、「極真会館」の名称を使用して空手の教授等を行って普及に寄与してきた者が、登録の無効をを主張して、審判を請求した。
本件商標
指定商品及び指定役務
第25類 「被服,空手衣」
第41類 「空手の教授,空手の興行の企画・運営又は開催」
結 論
本件商標の登録を無効とする。
理 由(要旨)
1 認定事実
(1)極真会館について
ア 倍達氏は、昭和39年に空手の流派に関する団体として「国際空手道連盟極真会館」を設立し、「極真会館」と略称された。
イ 同団体は、倍達氏生前の平成6年時点において、日本国内に総本部、関西本部のほか55の支部、550道場、会員数50万人を有し、世界130か国、会員数1200万人を超える勢力を有し、少なくとも、空手及びその他の格闘技に興味を持つ者らの間に広く知られていた。
ウ 同団体は、法人格を取得せず、多数の道場主が集合した権利能力なき社団であり、各支部・各道場が経済的に独立した事業者として「極真会館」の名称を使って、極真空手の教授等を行ってきたのであり、「極真空手」の係る周知性は、倍達氏のみならず、各道場に係る支部長等の寄与があった。
エ 倍達氏は、後継者を指名しないまま、平成6年4月26日に死亡した。倍達氏の死後、団体「国際空手道連盟極真会館」は、これと同一性を有しない複数の団体に分裂した。
同団体において世襲制が採用されていたことをうかがわせる証拠はなく、他に、倍達氏の三女である被請求人が後継者であったと認めるに足りる証拠はない。
(2)本件商標の登録出願の目的について
ア 上記(1)の状況から、被請求人は、倍達氏生前の団体「国際空手道連盟極真会館」とは同一性を有しない「極真会館」の文字を有する団体により極真空手の授業等を行う複数の団体の一の団体の代表者であるにすぎない。
イ 「極真会館」の名称を使って極真空手の教授等を行ってきた団体の道場等の総数は、本件商標の登録出願時(平成16年)では、少なくとも約700~900か所に及ぶと推定される。
ウ このような状況の中、平成16年10月15日、被請求人は、単独で本件商標の登録出願を行ったものであるから、被請求人は、他の事業者の活動を妨害し、使用料名目等で金銭を請求するなどの不正の目的を持って、その出願をしたものと推認せざるを得ない。このことは、「極真会館」の周知性に寄与があった請求人等に対して、本件商標に基づく差止め請求等を提起したことからも明らかである。
(3)以上よりすると、本件商標は、不正の目的を持って出願されたものと言い得るのであって、登録出願の経緯に社会性相当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 被請求人の主張について
被請求人は、次のように主張する。
極真関連標識は倍達氏自らが極真空手を表すものとして使用し、その結果、広く認識されるに至ったものであり、団体「国際空手道連盟極真会館」に属する各構成員に対しては、使用を許諾していたものにすぎず、倍達氏が生前中独占していた極真関連標識に関する各権利は、倍達氏及び妻智弥子氏の死亡によって被請求人に包括承継された。
しかし、倍達氏は、生前において「極真会館」の文字に係る商標権を所有しておらず、当該商標の主体たる相続の対象となる財産権であるとはいえない。「極真会館」に係る周知性は、倍達氏のみならず、各支部・各道場に係る支部長らの寄与があった結果であるから、「極真会館」の文字に係る標章の出所識別は、同団体であり、同団体に所属する構成員全体に、共有的ないし総有的に帰属していたものというのが相当である。また、被請求人は、団体「国際空手道連盟極真会館」における倍達氏の後継者であるとはいえないのであるから、被請求人が「極真会館」の文字に係る標章の主体たる地位を承継したと認めることはできない。
したがって、被請求人の上記主張は、採用できない。
平成29年8月25日発行「審決」より 2017.10.16 ANDO