商標関連情報
「碁石の上に人の笑顔」の立体図形(菓子) 複数業者が使用 商品識別機能なし
種 別 拒絶査定不服の審決
審判番号 不服2015-22053
確 定 日 平成29年(2017)7月19日
主な関連規程 商標法第3条第1項、同第2項
事案の概要
「碁石形の形状に人の目と口とを描いた立体形状(下記)を、菓子を指定商品として商標登録出願したところ、審査では、商標法第4第1項第11号に該当するものとして拒絶査定された。これに対して、出願人は不服審判を提起したが、当該審判では、商品の形状を普通に表示するにすぎない旨の拒絶理由(商標法第3条第1項第3号)が発せられた。
本願商標
指定商品 第30類 菓子
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理 由(要旨)
(1)本件商標の使用状況
請求人は、1935年(昭和15年)に創業した老舗の菓子メーカーで、東京、大阪、神戸、名古屋及び札幌に直営店舗を持ち、チョコレート、マシュマロ、ラスク、クッキー等の菓子を販売しており、その菓子には、本願商標と同様の色彩及び立体形状からなるチョコレートが含まれている。
また、本件チョコレートは、2012年(平成24年)に取り扱いを開始したAmazonのほか、他人が運営するインターネットを用いた通信販売サイトにおいて販売されている。
(2)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、全体として人の笑顔を認識させる構成からなるものである。
ところで、菓子を取扱う業界においては、需要者の関心を引き、購買意欲を喚起するなどのため、商品の形状や色彩を工夫することが一派に広く行われているところ、本願商標の薄桃色の色彩は、ありふれた単色ちいえるものであり、また、全体として人の笑顔を認識させる構成からなるものが、複数の事業者によって製造、販売されている実情が認められる。
そうすると、本願商標を指定商品に使用しても、、これに接する需要者は、これを自他商品の識別標識と認識するというよりも、むしろ商品の立体的形状そのものとして認識するとみるのが相当である。
してみると、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(3)商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて
請求人の取り扱いに係る商品が上記(1)のとおりの状況であるとしても、本件チョコレートが、いつから、どこで、どれくらいの数量が販売されたか明らかでなく、また、その商品紹介等も、積極的な宣伝広告活動や、新聞、雑誌等に記事が掲載された事実は見いだせない。
そうすると、本願商標に接する需要者に、自他商品識別標識としての機能を果たすものと認識されないというのが相当である。
したがって、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(4)請求人の主張についての判断
請求人は、次のア、イのように主張するところ、それについて判断した。
ア 本願商標は、指定商品の立体形状であるとしても、当該碁石形の形状に笑顔の図形を付した構成は、商品の一形態、一形状として認識されるにとどまらず、(a)顔の輪郭を表現する立体的な円形状がほぼ真円であり、(b)やや縦長の楕円形からなる両眼を、口の両端の幅に合わせて平行に配し、(c)一本の線からなる口を、円形状の下約3分の1の輪郭(曲線)に沿ってやや緩やかな弧に描き、(d)全体として、真円の輪郭と目と口のそれぞれの構成要素をほぼ等間隔にバランスよく配したという特徴をもって、需要者に対して自他商品識別力を発揮するから、本願商標の構成自体が、生来的に識別力を備えている。
しかしながら、菓子を取扱う業界において、碁石状の形態及び薄桃色の色彩は、商品自体の形状(形態)を構成する要素として普通に採択されているものであり、また、細部については、(a)ないし(d)と相違する点があるものの、総じて商品の立体的形状の一面に、全体として人の笑顔を認識させる構成からなるものが複数の事業者によって製造販売さている実情がある。
そうすると、本願商標は、際立った特徴を有するともいい難いものであるから、自他商品識別標識としての機能を果たすものとして認識されないというのが相応である。
イ 碁石状円形面を顔の輪郭に見立ててその上に人の笑顔を認識させる構成からなる商標の使用態様が、出所表示機能や自他商品識別標識として機能を有するか否かは、商標法26条に規定されている商標的使用の問題であって、登録要件としての識別力の判断で考慮されるべきでない。
しかしながら、出願に係る商標が、商標法第3条第1項第3項に該当するか否かは、当該商標の構成態様と指定商品に基づき、その指定商品に係る取引の実情を考慮して、取引者、需要者により当該指定商品の品質等を表示したものと認識されるか否かにより決すべきところ、本願商標に接する取引者、需要者の認識を認定するために採り上げた「菓子」に係る取引の実情である。
このような取引の実情を踏まえて本願商標をみるときは、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
平成29年9月29日発行「審決」より 2017.10.20 ANDO
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