商標関連情報
茶飲料「生茶」の容器 緑色の地色に小さな赤色の図形は、ありふれている
種 別 判定
判定請求番号 判定2017-600005
確 定 日 平成29年(2017)8月3日
主な関連規程 商標法第27条、同第28条
事案の概要
請求人は、昭和60年(1985年)に、我が国最初のに缶入り緑茶の「お~いお茶」の製造、販売を開始し、これが現在でも親しまれるロングセラー商品となっている。請求人は、「お~いお茶」シリーズ中の玉露を使用した高付加価値商品に高級感あふれる深みのある緑系統の色彩とアクセントとなる赤系統のワンポイント図形を商品パッケージに採用した。請求人は、商品の販売と商標による保護を強化するため、平成28年(2016年)5月20日付けで本件商標を出願し、同年11月25日付けで商標権の設定登録を受けた。
このような」状況の下、被請求人のグループ傘下である会社が、平成28年(2016年)3月22日から従来の茶飲料のリニューアルとして、イ号標章を商品パッケージとする茶飲料を販売した。
請求人は、イ号標章が本件商標に類似するものであり、本件商標に係る商標権の効力範囲に属することを確認するために本件判定を請求した。
本件商標
指定商品
第39類「茶、茶飲料」
イ号標章
使用に係る商品 茶飲料
結 論
商品「茶飲料」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理 由(要旨)
1 本件商標について
本件商標は、緑色の縦長長方形と、その内側に右斜め下に赤色の小さな縦長長方形を配した図形であって、該緑色の縦長長方形には、横縞のように視認される濃淡がつけられているところ、その構成態様からは、特定の称呼及び観念を生じるものとは認められない。
2 イ号標章について
商品「茶飲料」、とりわけ「緑茶飲料」を取り扱う業界においては、商品容器に付すラベルの地色を緑色とし、かつ、そのラベル上に赤色の小さな図形を配することが、しばしば見受けられるところである。
イ号標章は、商標「茶飲料」のペットボトル様の容器であって、その胴部に各種の文字や図形が配された地色を緑色とするラベルが付されているものであり、その構成中、「生茶」及び「KIRIN」の各文字が取引者、需要者に対し、強く支配的な印象を与え、自他商品の識別標識として認識されるといえ、緑色のラベル正面及びそのラベル正面にある緑色の「緑茶」の文字を内包する赤色の小さな略楕円形部分のみが分離、抽出されて取引者、需要者に注意をひくことはないというべきである。
してみれば、イ号標章は、その構成中の「生茶」の文字からの「ナマチャ」、「KIRIN」の文字から「キリン」の称呼を生じるものであり、また、「KIRIN」の文字から「キリン(ウシ目キリン科の哺乳類)」の観念を生じる。
3 本件商標とイ号標章との類否について
本件商標とイ号標章とを比較すると、前者は、図形からなるものであるのに対し、後者は、商品容器からなるものであるから、外観上、容易に区別し得るものであるし、また、本件商標と引用標章の構成中の緑色のラベル正面とを比較しても、取引者、需要者に対して強く支配的な印象を与える「生茶」や「KIRIN」の文字の有無などといった明らかな差異があるから、外観上相紛れるおそれはない。
また、本件商標は、特定の称呼及び観念を生じないものであるから、称呼及び観念を生じるイ号標章と比較しても、称呼上及び観念上、相紛れるおそれはない。
してみれば、本願商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念上、相紛れるおそれのない非類似のものというべきである。
4 請求人の主張について
両者は、背景図形(縦長短径図形)及びワンポイント図形の位置、大きさ、色彩が同一又は類似するものであり、商標としての基本的着想ないし基本的構成において軌を一にするものであるのみならず、いずれも深みのある茶系統の色彩の背景図形の中に赤系統の色彩を付したワンポイント図形を配した図形が、強く印象され、記憶され得るというべきであるから、商標として互いに類似する旨主張する。
しかしながら、イ号標章の使用に係る商品「茶飲料」及びその商品の取引の実情に鑑みれば、緑色のラベル正面と赤色の小さな楕円形がイ号標章の構成から独立して分離、抽出されて取引者、需要者の注意をひくことはないものである。
してみれば、請求人が、イ号商標から、これらを分離、抽出して本件商標とイ号標章とが類似するとする主張は、その前提において失当であり、採用することはできない。
平成29年9月29日発行「審決」より 2017.11.17 ANDO