商標関連情報
「Kappa」(トレーニングウエア) 「KAPAPA」は紛れるおそれない
種 別 異議の決定
異議申立番号 異議2017-900115
確 定 日 平成29年(2017)8月17日
主な関連規程 商標法第4条第1項第11号、同項第15号
事案の概要
「KAPAPA」の欧文字を淡い緑色の縁取りをした袋文字で表示した商標(下記「本件商標」)が、運動用特殊被服等を指定商品として登録された。これに対して、「KAPPA」なる商標を「かばん類」や「被服、運動用特殊衣服」等について登録し、これをトレーニング・アスレチックウエアに30年以上にわたって使用してきた者が、以下の理由で登録の取消を求めて異議申立てをした。
(異議申し立ての理由の要旨)
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標は、「K」,「A(a)」,「P(p)」,「P(a)」,「A(a)」の5文字を共通にしており、外観において共通性を有するもので、かつ、それぞれを一連に称呼した場合、全体の語感、語調が相当程度類似するから、相紛れるおそれがあり、観念において区別できる事情もない。両商標は、その外観、観念及び称呼等によって取引者に与える印象等を総合して全体的に考察すると、商品の出所について混同を生ずるおそれがある類似の商標である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、造語であり、永年継続して使用された結果、申立人の業務に係る商品を表示するものとして認識され、その周知性及び独創性の程度は高い。また、本件商標の指定商品は、衣料関連商品であり、申立人の業務に係る商品と性質、用途又は目的における関連性の程度は高い。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合、商品の出所につき誤認を生じさせるとともに、引用商標の顧客吸引力へのただ乗りや希釈化を招くという結果を生じかねない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
本件商標
指定商品
第18類 「皮革,かばん類,つえ,傘,愛玩動物用被服類」等
第25類 「被服,履物,ワイシャツ類,下着,水泳着,帽子,靴下,運動用特殊衣服」等
引用商標1及び2
指定商品
第25類
第35類
引用商標3
指定商品
第9類,第20類,第21類,第29類,第30類,第32類
引用商標4,5,6 省略
結 論
本件商標の商標登録を維持する。
理 由(要旨)
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標の欧文字は、特定の意味合いを有する成語を表したものでないため、特定の観念を生じるものでないが、その構成文字に相応して「カパパ」の称呼が生じる。また、本件商標権者は、「KAPAPA」の名称よりなる商品「リュックポーチ」の紹介に際して、「かっぱっぱ」の語も併記していることから、取引の実態に応じて「カッパッパ」の称呼も生じる。
(2)引用商標について
ア 引用商標1及び2について
引用商標1及び2は、我が国で特に親しまれた語ではなく、その他「合羽」又は「河童」などの日本語をローマ字で表してなる可能性も想起させ得るものの、このような語の中から、直ちに特定の語を表してなるものとも看取できないため、当該欧文字をして、特定の観念は生じないというべきである。ただし、その構成文字に相応して、「カッパ」の称呼は生じる。
イ 引用商標3について
引用商標3は、特定の観念は生じないが、その構成文字に相応して「カッパ」の称呼は生じる。
(3)本件商標と引用商標との比較
ア 本件商標の「カパパ」の称呼と引用商標の「カッパ」の称呼を比較すると、全体の音数が3音と比較的短く、差異音の「パ」は比較的強く発音される破裂音で、閉鎖音である「促音」との違いも容易に聴取できる。そのため、称呼において類似するものではない。
また、本件商標の「カッパッパ」の称呼と引用商標の「カッパ」の称呼を比較すると、容易に聴別できるものであり、称呼において類似するものでない。
イ 本件商標と引用商標の外観を比較すると、中間部の「A」の文字の有無の違いから、全体としての称呼としても明らかに相違する語を表してなるものと容易に認識、理解できるのだから、該文字の有無が、両商標の外観上の印象に与える影響は大きい。また、両商標の表示態様も、緑色の縁取りをした袋文字と赤色の縁取りをした袋文字としていることやすべて大文字としているのに対し、語頭以外は小文字としているなど外観上の印象にも差異がある。
このような構成文字及び表示態様の差異を考慮すると、外観において類似するものではない。
ウ 本件商標と引用商標は、特定の観念を生じるものではないから、観念について比較できない。
エ 上記のアからウを踏まえると、本件商標と引用商標とは、互いに相紛れるおそれのない別異の商標である。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人の業務に係る商標の周知性
(ア)「Kappa」は、SACT社が1950年代に設立した、イタリアのアパレル及びスポーツ関連アイテムを展開するブランドであり、フットボールを中心としたサプライヤーとして、プロサッカーチームと契約し、ユニフォーム提供などを行っている。
(イ)申立人は、MCT社(SACT社が前身)と、1983年にに技術提携及びブランドライセンス契約を締結し、1984年から「Kappa」ブランドの日本での展開を開始し、それ以降30年以上にわたって販売されており、その宣伝広告には最近10年間でも年間1~2億円程度の費用が支出されている。また、「Kappa」ブランドのスポーツアパレル業界における国内販売額も1999年に78億円(業界全体の構成比は1.9%)あった。最近の5年間(2010~2015年)でも「カッパ」と「カッパゴルフ」を併せても年間37億~38億程度(業界全体の構成比は1%以下)はある。
以上よりすれば、「Kappa」ブランドは、近年の売上高及び市場シェアは極めて大きいわけではないが、30年間以上の長期にわたる継続した販売実績や、かっての比較的高い販売実績や市場シェアなどを考慮すると、申立人の業務に係る商品「トレーニングウェア、スポーツウエア、陸上競技用衣服、サッカー競技用衣服」を表す商標として、我が国の需要者の間では、そのブランドの存在程度はある程度知られるようになっていたものといえる。
(2)出所の混同について
申立人の業務に係る商標「Kappa」は、「ギリシャ文字の『K』を『カッパ』と呼ぶ」ことから名づけられたものであり、造語とはいえないが、直ちに特定の語を表してなるものとも看取できないため、独創性が極めて高いとはいえないものの、独創性が備わっていないともいうことができない。また、申立人の業務に係る商標「Kappa」は、上記(1)の如く、ある程度知られるようになっており、それらの商品は本件商標の一部の指定商品に包含されるような関連性がある。
しかし、上記1(3)のとおり、両商標は別異の商標であるから、その需要者、取引者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すれば、本件商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者は、別異の商標と認識するのだから、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
平成29年9月29日発行「審決」より 2017.11.24 ANDO