商標関連情報
「Smily face(図)」(被服) 「図・Harvey Ball」は外観的印象が共通し類似
種 別 拒絶査定不服の審決
審 判 番 号 不服2016-15097
確 定 日 平成29年(2017)8月29日
主な関連規程 商標法第4条第1項第11号
事案の概要
円輪郭内の上部に目と思しい小さい黒塗りの縦長楕円形を2つ並べ、その下に口と思しき両端上がりの弧線を描いてなり、その円輪郭の右下部分にわずかに重なるように「Harvey Ball」の文字を、筆記体で、右上がりに横書きしてなる商標(下記「本願商標」)を、「被服」を指定商品として商標登録出願したところ、人の笑顔を描いたと思しき円輪郭の図形(下記「引用商標1~4」)の登録商標と類似することを理由として拒絶査定された。
これに対し、出願人は、「Harvey Ball」の文字の記載があるから類似しないこと、著作権を承継していること等を理由として、拒絶査定の取消しを求めて審判を請求した。
本願商標
指定商品 第25類 被服
引用商標1
指定商品 第25類 被服 等
引用商標2
指定商品 第25類 被服
引用商標3
指定商品 第25類 被服、仮装用被服
引用商標4
指定役務 第35類 被服の小売り役務 等
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理 由(要旨)
(1)本願商標について
本願商標のうち図形部分は、一見して人の笑顔を簡潔、かつ、象徴的に表現したものと認識されるものであり、本願商標中の主要部を占めている。そして、「Harvey Ball」の文字部分についても、ごくありふれた書体で書されており格別個性的というほどのものではなく、また通常は特段の意味合いを想起させるものではないため、当該文字部分と図形部分とは特段の観念上のつながりもなく、両部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものではない。そのため、本願商標の図形部分は、人の笑顔を簡潔かつ象徴的に描写するものとして、見る者の注意を惹き、強く支配的な印象を与えるものいうことができる。
(2)引用商標について
引用商標(1)~(4)のいずれも、円輪郭内の上部に目と思しき小さい黒塗りの縦長楕円形を2つ並べ、その下に口と思しき両端上がりの弧線を描いてなるものであり、そのような外観的特徴から、簡潔、かつ、象徴的に人の笑顔を描いたものであることを印象づけるものである。そのうち、引用商標2は、円輪郭の図形の上部に、「LOVE EARTH」の文字を上向き弧状に表してなるところ、その図形部分と文字部分とは、間隔を置いて配置されていることから、視覚上分離して認識されるばかりでなく、両者間に直接的な観念上のつながりを看取することはできないため、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合したものではない。
(3)本願商標と引用商標の類否及び指定商品の類否について
本願商標はその構成中の図形部分をもって要部ということができる。、
本願商標と引用商標の図形部分を比較すると、いずれも互いに円輪郭、円輪郭内部に配された2つの小さい黒塗りの縦長楕円形及びその下方に配した両端上がりの弧線を基本的な構成要素とし、これらによって円形の顔に目と口を有する人の笑顔を、簡潔かつ、象徴的に描写したものと看取される点において外観的な印象を共通にする。各構成要素は、長さ、太さ及び曲率、色彩等においてそれぞれ微妙に差異を有するものの、それぞれの構成要素を共通にするものであるため、その構成全体として見る者に似通った印象を与える。
本願商標の指定商品「被服」は、専門的なものではなく、一般的な消費者の間で取引、使用されるものであるため、その需要者、取引者が微細、かつ、厳密な注意力をもって商品に付された商標を観察することは期待できないことから、本願商標と引用商標を時と場所を異にして離隔的に観察したときは、図形部分の微妙な差異によって区別することは困難といわざるを得ないから、本願商標と引用商標は、外観において類似する。
本願商標の指定商品「被服」は、引用商品1から3の指定商品と同一又は類似する。引用商標4の指定役務中「被服の小売り役務」とは、商品の製造、販売と役務の提供が同一事業者によって行われていることも多く見られ、その商品は役務の提供における取扱い商品と一致し、それぞれの需要者の範囲も一致するから、相紛らわしい、類似するものといえる。
(4)請求人の主張について
請求人は、本願商標の日本での商標権及び著作権を管理する日本法人であり、引用商標は本願商標を真似て出願されたこと、引用商標は実際に使用されていないこと、本願商標を登録しても問題が生じないこと、その他、本願商標に関連する著作権やそれに関連した種々の話題を引用しつつ、知的財産権が適切に保護されるべき旨主張する。
しかし、現時点において有効に存在している引用商標に基づいて、商標法第4条第1項第11号の規定を適用することは、請求人の主張するような理由によって、特段妨げられるものではない。
(5)まとめ
以上のとおり、本願商標は、引用商標と類似し、その指定商品も、引用商標の指定商品および指定役務と同一又は類似するから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
平成29.9.29発行「審決」より 2017.11.30 ANDO