商標関連情報
「オルガノ」(水処理装置事業) 「ORGANO SCIENCE」は類似・混同する
種 別 無効の審決
審 判 番 号 無効2016-890036
確 定 日 平成29年(2017)8月10日
主な関連規程 商標法第4条第1項第11号、同項第15号
事案の概要
「ORGANO SCIENCE」なる商標が、「有機半導体化合物、電導性有機化合物」等を指定商品として登録された。これに対し、「ORGANO」なる商標を「界面活性剤、化学剤」を指定商品として登録し、かつ、これを使用している者が、その登録商標が「ORGANO」と類似するものであること、及び、この商標を水処理装置及び水処理薬品等に使用し著名であるから、商品および役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものであることから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当することを理由として、登録の無効を主張して審判を提起した。
本件商標
ORGANO SCIENCE (標準文字)
指定商品
第 1類 芳香族有機化合物,アルコール類,有機酸及びその塩,有機半導体化合物,電導性有機化合物 等
第40類 有機化合物の合成及び加工処理
引用商標1
引用商標2
使用商品
第1類 界面活性剤,化学剤
結 論
本件商標の登録を無効とする。
理 由(要旨)
1 引用商標の著名性
(1)営業活動
ア 請求人は、昭和21年に株式会社日本オルガノ商事として設立され、昭和41年に現在の「オルガノ株式会社」に商号を変更した。その英訳名は、「ORGANO CORPORATION」であり、「オルガノ」及び「ORGANO」は、請求人設立以来、請求人のハウスマークとして使用している。また、請求人の子会社の多くは、社名に「オルガノ」の文字を冠している。
イ 請求人は、総合水処理エンジニアリング会社として、水処理エンジニアリング事業と機能商品事業を中心に営業活動を行う企業であり、主要営業品目には、産業用水処理設備等の事業があり、また、薬品関連の事業では水処理薬品等の製造・販売を行っている。
ウ 請求人は、1980年代における半導体の製造に不可欠な超純水製造装置の納品で急成長し、2008年度(平成20年ど)の超純水製造装置の市場占有率は30%を超えている。また、原子力発電所向けの水処理プラントでは圧倒的シェアを有しており、電気再生式イオン交換装置の請求人の2008年度(平成20年度)の市場占有率は約15%である。
エ 請求人は、平成23年3月の時点において、子会社21社、関連会社2社及び東ソー(親会社)で構成されるグループを形成し、さらに、海外に関連会社を有し、国際的な事業展開も行っている。
請求人事業の売上高は、平成23年3月期(平成22年4月1日~平成23年3月31日)は、610億9700万円であり、そのうち水処理エンジニアリング事業は、406億1800万円であり、平成24年3月期(平成23年4月1日~平成24年3月31日)は、685億200万円であり、そのうち、水処理エンジニアリング事業は490億9600万円である。
オ 請求人は、新聞広告、テレビ、インターネット及び雑誌を介して広告を行っている。
(1)上記の事実によれば、請求人は、総合水処理エンジニアリング会社として我が国大手の企業であり、そのグループ会社は、これに関連した商品の製造販売・役務の提供その他の幅広い分野において営業活動を展開しており、「オルガノ」及び「ORGANO」の表示は、請求人の略称を表示するものとして、また、請求人のハウスマークを表示するものとして、我が国産業界で広く知られていた。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)商標の類否
ア 本件商標
本件商標はその構成中の「ORGANO」と「SCIENCE]の間には、1文字程度の間隙があり、分離して看取されやすいばかりでなく、構成全体から生ずる称呼「オルガノサイエンス」の称呼は、やや冗長である。
また「SCIENCE」は、「化学」を意味し、指定商品・指定役務との関係からみると、さほど強い識別機能を有するとはいえない。これに対し、「ORGANO」は、「有機の」を意味する英単語であるところ、その片仮名文字表記である「オルガノ」は、一般に広く知られていない。
そうすると、「ORGANO」と「SCIENCE」との間に、その有する意味の浸透の程度及び識別力の点において、極めて大きな差異を有するばかりか、請求人の商標は、請求人の略称及びハウスマーク並びに請求人の主たる業務に係る水処理装置事業及び薬品事業を表示するものとして、、著名性を獲得している実情を考慮すると、本件商標中の「ORGANO」の文字部分は、出所識別標識として強く支配的な印象を与える。
したがって、本件商標は、その要部である「ORGANO」の文字部分から、単に「オルガノ」の称呼を生ずる。
イ 引用商標
引用商標1及び引用商標2における図形部分と「ORGANO」又は「オルガノ」の文字部分とは、外観、観念及び称呼の点からみて、常に一体のものとして把握しなければならない特段の理由は存在しないから、それぞれ独立して自他商品及び役務の識別機能を果たし得る。
ウ 本件商標の要部「ORGANO」は、引用商標1と外観において類似し、称呼を共通にする。
したがって、本件商標と引用商標は類似する。
エ 被請求人は、「『ORUGANO』や『オルガノ』の語は、『有機、器官』等の意味の連結形としてよく使用される語であり、また、有機や器官という商品や役務の効能や用途を示す場合もあり、独創性のある語とはいえないから、このような登録商標の類似範囲は限定して解釈されるべきである。」旨主張している。
しかしながら、「ORGANO」及び「オルガノ」の語は、我が国において一般に十分に浸透していない語と認められる一方で、請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして著名であることを考慮すると、独創性が無いとはいえず、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たしているというべきである。
(3)以上のとおり、本件商標と引用商標とは、類似し、その指定商品には「化学剤」を含んでいるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)混同を生ずるおそれの有無
ア 本件商標と請求人商標の類似性
前記2(1)にとおり、本件商標と引用商標は、外観又は称呼において類似する。
イ 請求人商標の著名性および独創性の程度
前記1(2)のとおり、請求人商標は、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されている。
また、請求人商標は、独創性が極めて高いといえないものの、独創性が備わっていないということもできない。
ウ 商品の関連性の程度及び需要者の共通性等
請求人は、総合水処理エンジニアリング会社として、水処理装置事業とこれに密接に関連する薬品事業を柱とする企業であり、その需要者は、半導体や液晶等の電子産業をはじめ、用水製造等の水処理プラント又は水処理薬品等の化学剤等を必要とする各種製造業、サービス業、発電所、国の機関、自治体、一般消費者等である。
一方、本件商標の指定商品及び指定役務中の「有機半導体化合物,電導性有機化合物」の需要者は、有機半導体材料や有機EL材料を使用する電子産業である。
そうすると、本件商標の指定商品及び指定役務と請求人の事業に係る商品及び役務は、いずれも化学品の分野に属する点で一致し、加えて、本件商標の指定商品は、請求人の業務に係る薬品の原材料となりうるものが多く含まれているから、両者は、極めて強い関連性の高い商品及び役務というべきである。
エ 請求人の多角経営
請求人は、主力事業である水処理事業と薬品事業の技術力を活かして、化学工学及び工業化学分野でに広範な事業を行う一方、工業薬品類の販売、食品素材・添加物の開発・製造販売、工場排水処理設備の製造・販売等を行うなど多角的な経営を行っている。
オ 以上を総合すると、請求人商標と本件商標をその指定商品及び指定役務中の「化学剤」以外のの指定商品及び指定役務について使用するときは、その取引者、需要者は直ちに請求人商標を想起、連想させ、商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に該当する。
平成29年10月27日発行「審決」より 2017.12.13 ANDO
注:「オルガノサイエンス」(標準文字)については、下記の判決及び審決がある。
知財高裁第2部 平成26年(行ケ)第10268号 平成27年8月6日
無効2014-890019確定日 2017.2.7