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商標関連情報

審決

カジノゲーム用「トランプ繰り出し装置」(形状) 輸出専用・使用による顕著性なし

種  別 拒絶査定不服の審決
審判番号 不服2015-907
確 定 日 平成29年10月11日

種  別 審決取消請求事件
裁判番号 平成28(行ケ)10266
判決言渡 平成29年9月27日

主な関連規程 商標法第3条第1項第3号、同条第2項

事案の概要
カジノで行われているバカラゲーム用に製造・販売している「トランプの真偽又はゲームの勝敗を判定するプログラムを内蔵してなるトランプ繰り出し装置」の形状を立体商標登録出願したところ、審査において、この商標は指定商品の形状を表示する図形に過ぎないものとして拒絶査定された。
これに対して、出願人は、当該商品は、ありふれた形状ではないこと、及び、輸出専用品であり、需要者の間で広く認識されていることを理由として、自他商品識別機能を有するに至っていることを主張して、拒絶査定の取消しを求めて審判を請求した。

本願商標(別掲1)

JPJ1427000907_000001

指定商品
第28類 トランプに内蔵印刷されたトランプ識別コード識別認識機能及び識別認識結果によりトランプの真偽又はゲームの勝敗を判定するプログラムを内蔵してなるトランプ繰り出し装置

別掲2(カジノにおいて容器として使用されている事実)
(1)株式会社データハウス発行「カジノ教本≪愛蔵版≫」に、以下のカード容器の写真が掲載されている。

JPJ1427000907_000002
(2)「オンラインカジノ体験攻略 必勝!カジノオンライン」のウェブサイトにおいて、以下のカード容器の写真が掲載されている。
JPJ1427000907_000003

別掲3(我が国におけるゲーム用品を取り扱う業界においてトランプゲーム用のカード容器として製造販売されている事実)
(1)「amazonn.co.jp」のウェブサイトにおいて、以下の商品の写真が掲載されている。

JPJ1427000907_000004
(2)「amazon.co.jp」のウェブサイトにおいて、以下の商品の写真が掲載されている。

JPJ1427000907_000005
別掲4(ゲーム用品を取り扱う業界において、ボタンやスイッチ等が搭載されている事実)
「楽天市場 AS shop」のウェブサイトにおいて、以下の複数のボタンが搭載されたダーツボードの写真が掲載されている。

JPJ1427000907_000009
その他ウェブサイトに掲載されている写真等 省略

結  論
本件審判の請求は、成り立たない。

理  由(要旨)
(1)商標法第3条第1項第3号について
諸外国のカジノにおいては、バカラやブラックジャックなどのカジノゲーム(トランプゲーム)を行う際に、トランプを格納して、上から1枚ずつ取り出せるカード容器(別掲2) が用いられている。また、我が国におけるゲーム用品を取り扱う業界においても、上記カード容器と同様の箱状の立体形状が、トランプゲームを行う際に、トランプを格納して、上から一枚ずつ取り出せる商品(別掲3)として販売されている。
そこで、本願商標の立体的形状と一般的なカード容器の形状とを比較すると、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられているとはいえないものであるから、本願商標は、同種の商品等について、美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものといい得るものであって、商品の美観に資することを目的とする形状というのが相当である。
また、本願商標の立体的形状には、ランプやボタン、接続口等を有している点で、一般的なカード容器の形状と差異を有するものの、これらは、各種電子機器の機能を発揮させるために搭載されているもの(別掲4)であって、機能上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものと言い得るものであって、商品の機能に資することを目的とする形状というのが相当である。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、自他商品の識別標識として認識し得ない。
たがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項について
(ア)本願商標及び使用に係る商品の構成態様
本件使用商品には、その上面に、「ANGEL EYE」等の記載が認められる。本願商標と使用に係る商標が、仮にその立体的形状部分は本願商標と同一の範囲内のものであるとしても、立体的形状部分よりも看者の注意を惹く程度が著しく、自他商品識別力が強い、「ANGEL EYE」等の文字の有無において異なっているから同一性を有しない。
(イ)使用期間、使用地域及び商品の販売数量
請求人は、本件商品を2005年2月71日より、日本から海外へ輸出している。2005年から2014年の間に、アジア、オセアニア、北米及びヨーロッパの各国に、合計14,841台販売し、同時期の売上高は、27億円、販売促進費用は、約1億3千万円である。
しかしながら、販売台数や販売地域をもって需要者に認識されたものと評価できない。
また、本件使用商品がゲーム産業における賞にノミネートされ、又は受賞したことがうかがえるものの、該賞の選考基準、表彰までの経緯等が定かでない。
そもそも、本件使用商品は輸出専用品であって、バカラゲームを行うことができない我が国においては一般に流通しておらず、そのほとんどが諸外国のカジノにおける使用事実を示すものであって、我が国の需要者の認識に直接反映されたものとはいえないから、我が国において本願商標が需要者の間に広く認識されているということはできない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標が、「靴」のイメージと「スポーツカー」のイメージを意図的に組み入れたものであり、特異的な立体形状ゆえに、需要者に美しい未來感や大自然の緩やかな流れを具現した標章というイメージを与え強く印象を残すものである旨主張する。
しかしながら、請求人がどのような意図をもって本願商標を採択したとしても、本願商標に接する取引者、需要者が、そのような意図に沿ってのみ本願商標を理解、認識するとはいえない。
イ 本願商標は、米国、欧州、オーストラリア、ロシア、マレーシア等の諸外国においてすでに登録されており、我が国において請求人に独占使用を認めても公益上何ら問題が生ずることはない旨主張する。
しかしながら、本願商標は、我が国商標法のもとで、その登録の可否が判断されるのであって、取外国における登録例をもって本願商品識別性の判断について、同一解釈しなければならない事情が存するものとは認められない。
(4)以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものではない。

平成29年11月24日発行「審決」より 2018.1.9 ANDO

商標権者は、上記審決に対し、標記記載の審決取消請求の訴えを提起したが、「原告の請求を棄却する。」との判決がされた。

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