商標関連情報
「PUmA」(スポーツシューズ等) 独創性は文字の態様 「Spuma」は混同しない
種 別 異議の決定
異議申立番号 異議2017-900147
確 定 日 平成29年12月9日
主な関連規程 商標法第4条第1項第15号
本件商標
指定商品
第35類 コインランドリーの新規事業開設及び経営ノウハウ等に関する指導及び助言,ポスター及びチラシの企画・作成 等
引用商標
指定商品
第3,4,6,9,12,13,14,16,18,19,20,22,24,25,26,27,28,30,32類(第25類には、「運動用特殊衣服、運動用特殊靴」が含まれている。)
結 論
本件商標の商標登録を維持する。
理 由(要旨)
(1)引用商標の著名性について
(ア)申立人は、1948年に設立されたスポ-ツシューズ、被服、バッグ等を世界的に製造販売している多国籍企業である。
(イ)我が国においては、申立人の業務に係る商品のうち、靴については、1972年から、日本国内における代理店としてコサ・リーベルマン株式会社が事業を展開し、2003年5月1日に、申立人の日本法人であるプーマジャパンが同事業を承継した。
アパレル関連商品については、1972年から、国内のライセンシーであるヒットユニオン株式会社が製造販売していたが、2006年1月に、日本において引用商標を付したアパレル関連商品を生産する、申立人の日本法人であるプーマアパレルジャパン株式会社が設立された。
(ウ)申立人は、1948年から「PUmA」の文字をプーマ社のブランドとしてスポーツシューズ等のスポーツ用品・スポーツウェアに使用し、我が国においては、1972年から靴、バッグ、アクセサリー等について製造・販売してきたこと、かつ、引用商標を付してスポーツ分野でスポンサーとして協賛し、有名人等とコラボレーションをした商品等を、少なくとも2009年には、ウェブサイトにおいて掲載してきたことが認められ、また、2013年ないし2017年における「プーマ」ブランドの売上高も堅調に推移しており、「スポーツシューズメーカー別国内出荷金額」及び「スポーツアパレルのブランド別国内出荷金額ランキングにおいても上位に位置している。
してみれば、「PUmA」の文字からなる引用商標は、申立人の業務に係るスポーツシューズ、被服、バッグ等のスポーツ用品・スポーツウェアを表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認められる。
しかしながら、「PUmA」の文字からなる引用商標が、スポーツ用品等以外の商品又は役務の分野において、広く著名性を有していることを認めるに足りる証拠は見当たらないから、本件商標の指定商品の分野の需要者にまで、広く知られているとは認められない。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
ア 本件商標
「S」の文字及び「puma」の文字の間にはやや間隔を有するものの、背景の円図形の中に、同じ文字種、書体で表され、視覚上まとまりよい印象を与えるものである。
そして、英文字等で構成される商標の先頭の文字を大きく表示してデザイン化する手法は、一般的によく用いられるものといえることから、「S」及び「puma」の文字色が異なるとしても、これらを一体として認識するのが自然である。
加えて、引用商標の周知性は、本件商標の指定役務の分野にまで及ぶものではないことからすれば、ことさら本件商標の構成中「puma」の文字部分を分離抽出すべき理由は見当たらない。
したがって、本件商標からは、「スプーマ」の称呼のみが生じ、特定の観念は生じない。
イ 引用商標
引用商標「PUmA」は、全体をもってあたかも横長の四角枠内に隙間なくはめ込まれたような印象を与えるものであるから、これに接した需要者に、引用商標全体として一体の構成からなるものとの印象を与えるものである。
また、引用商標からは、「プーマ」及び「ピューマ」の称呼を生じ、ネコ科の哺乳動物である「ピューマ」の観念を生じる。
ウ 本件商標と引用商標との比較
そうすれば、両商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(3)本件商標と引用商標の独創性について
本件商標は、その文字の態様は色彩が施されている上、欧文字の形としては、太字で表されているものの、格別特徴的な態様とはいえない。
一方、引用商標は、その構成文字の「PUmA」は、ネコ科の哺乳類の「ピューマ」を意味する英単語「puma」に由来するものであり、その語自体は、申立人が作り出した造語ではく、格別独創性の高いものとはいえないものの、構成中の「m」は小文字、それ以外は大文字の態様で表し、かつ、それぞれの文字は、縦線を太く、横線を細く表し、全体として横長の四角枠内に隙間なくはめ込まれたような態様で表示されている点に特徴がある。
そうすると、仮に引用商標が独創性を有するといい得ても、その独創性は、文字の態様にあるとみるべきであり、「puma」の欧文字自体には申立人の独創性は認められない。
してみれば、本件商標中に、引用商標と同じつづりの「puma」の文字が含まれているとしても、引用商標の特徴を本件商標に見出すことはできない。
(4)本件商標の指定役務と引用商標の指定商品の関連性
本件商標の指定役務は、事業の管理・運営や広告の役務を提供する事業者が行うことが一般的であり、引用商標の「スポーツ用品・スポーツウェア」の商品を製造・販売する事業者とは異なる。
そうすると、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品との関連性は低いものである。
(5)出所の混同のおそれについて
引用商標は、申立人又は同人の業務を表示するものとして、本件商標の指定役務の分野の需要者の間に、広く認識されているものとは認められない。
また、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品との関連性は低い。
さらに、申立人が提出した証拠からは、申立人が本件商標の指定役務の分野にまで事業を拡大している等の事情を見いだせないから、本件商標をその指定役務に使用した場合に、申立人を連想、想起するようなことはないというべきである。
してみれば、商標権者が本件商標をその指定役務について使用した場合、役務の出所について混同を生じさせるおそれはないと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(6)また、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号にも該当しない。
平成30.1.26発行「審決」より 2018.3.30 ANDO