商標関連情報
「マイナンバー」(社会保障・税番号) 国民全体が関心・注目して著名 対「マイナンバー保護士」
種 別 拒絶査定不服の審決
審判番号 不服2017-1293
確 定 日 平成29年11月16日
関連規定 商標法第4条第1項第6号、同第11号
本件商標
マイナンバー保護士
(標準文字)
指定役務
第41類 検定試験の企画・運営又は実施及びこれらに関する情報の提供、検定試験受験者へのセミナーの開催及びこれらに関する情報の提供 等
請 求 人 一般財団法人全日本情報学習振興協会
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
(本願商標は、商標法第4条第1項第6号及び同第11号に該当する。)
理 由(要旨)
1 商標法第4条第1項第6号該当性について
(1)「マイナンバー」の文字について
「マイナンバー」の文字からは、「マイナンバー法(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)に基づく社会保障・税番号」の意味合いを理解させる。
(2)「マイナンバー制度」について
「マイナンバー制度」は、マイナンバー法に基づいて内閣等の行政機関が、「公平・公正な社会の実現」等を目的として実施している公的制度であり、国や地方公共団体等が実施する事業といえる。
(3)「マイナンバー」の標章は、「公益に関する事業であって営利を目的としないもの」を表象する標章である。
(4)「マイナンバー」の標章が、著名であることについて
「マイナンバー」の文字は、2013年5月に「マイナンバー法」が成立し、2016年に我が国が新たに運用を開始した社会保障・税番号に関する「マイナンバー制度」において使用されている標章として、国民全体が関心を持って注目してきたものであって、著名な標章である。
(5)「マイナンバー」の標章と本願商標の類似性について
本願商標は、その構成中の「マイナンバー」の文字部分は、「マイナンバー法に基づく社会保障・税番号」を理解させる著名な「マイナンバー」と同一であるから、この部分が本願商標の要部として看者の注意を惹くものといえる。
そうすると、本願商標は、著名な「マイナンバー」の標章と文字を共通にするものであるから、両者は、類似する商標であり、需要者をして国や地方公共団体等と何らかの関係を有する者による役務であるかのように、その出所について混同を生じるおそれがある。
そうすると、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当する。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
引用商標
マイナンバー
(標準文字)
権 利 者 内閣府大臣官房会計課長
指定役務
第41類 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号)に関する知識の教授,社会保障・税番号制度に関する知識の教授,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授,行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用に関する法律(平成25年法律第27号)に関するセミナーの企画,運営又は開催,社会保障・税番号制度に関するセミナーの企画・運営又は開催 等
第 9、16,25,35,36,38,42,45類
(1)本願商標について
本願商標中、「マイナンバー」の文字部分は、上記1(5)のとおり、本願商標の要部として看者の注意を惹くものといえる。
また、「保護士」の文字部分は、「保護することに関して一定の資格をもった者」程の意味合いを理解させる。本願指定役務中の「検定試験の企画・運営又は実施及びこれらに関する情報の提供,検定試験受験者へのセミナーの開催及びこれらに関する情報の提供」などの役務との関係から、「保護士」の文字部分は識別が弱いものである。
そうすると、本願商標は、「マイナンバー」の文字部分が要部であり、その部分に相応して、「マイナンバー」の称呼を生じ、「マイナンバー法に基づく社会保障・税番号」の観念を生じる。
(2)引用商標について
引用商標は、「マイナンバー」の称呼を生じ、「マイナンバー法」に基づく社会保障・枝番号の観念を生じる。
(3)本願商標と引用商標の類否について
本願商標の要部として看取される「マイナンバー」と引用商標は、ともに同じ文字であるから、外観上、近似した印象を与えるものであり、「マイナンバー」の称呼及び「マイナンバー法に基づく社会保障・税番号」の観念を同一にする。
これらを総合してみれば、役務の出所について誤認混同を主ずるおそれがある互いに類似の商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 請求人の主張
(1)商標法第4条第1項第6号該当性の主張について
請求人は、「請求人が行う講習会等による共通番号制度に関する適正取扱者である「マイナンバー保護士」の育成は、喫緊の課題に応え、かつ、円滑な国家運営に資することを目的とするものであるから、内閣府等から歓迎されることはあり得るとしても、いかなる問題も生じる余地がなく・・・商標法第4条第1項第6号に該当することはない」旨主張している。
しかしながら、上記の主張は、独自の見解であって、首肯することはできない。
商標法第4条第1項第6号の趣旨は、その団体の公共性にかんがみ、その権威を尊重するとともに、出所の混同を防いで需要者の利益を保護しようとすものである。本願商標は、国や地方公共団体等と何らかの関係を有する者による役務であるかのように、その出所について混同を生じるおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性の主張について
請求人は、本願商標からは、「私の番号(マイナンバー)を気を付けてまもる一定の資格・役割をもった者の意味合いを生ずるものであるから、構成全体をもって一体不可分の造語として認識し、把握されるとみるのが自然である」旨主張している。
しかしながら、本願商標における「マイナンバー」の文字の周知性からすれば、「マイナンバーを保護することに関して一定の資格をもった者」の意味合いが生じる場合があるとしても、請求人のいう「私の番号を気を付けてまもる一定の資格・役割をもった者」の意味合いを生じるとはいえない。
したがって、請求人の主張は、いずれも採用できない。
平成30年1月26日発行「審決」より 2018.4.9 ANDO