商標関連情報
「チャッカマン」(点火棒) 「チャッカボー」は混同しない
商標登録無効審判
事案の概要
商標「チャッカボー」(下記1)(本件商標)が、「喫煙用具」について商標登録された。
これに対し、「喫煙用具、マッチ」等を指定商品として「チャッカマン」(登録商標)を商標登録し、かつ、点火棒に、下記4のようにレタリングした商標(使用商標)を使用して著名となっている商標権者が、主に次の理由を主張して、本件商標の登録の無効を求めて審判を請求した。
本件商標は、「チャッカ」と「ボー」の文字の色彩が異なるばかりなく、「ボー」の文字が部分的に図案化されていることから、外観上分離して観察されやすく、語頭の「チャッカ」の文字は、使用商標の語頭部分と同一であるから、「チャッカ」の文字部分が需要者の目を引くから、本件商標は使用商標と混同を生ずるおそれがある。したがって、商標法第4条第1項第15号に該当する。
また、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第19号にも該当する。
1 本件商標(登録商標)
本件商標の指定商品
第34類 喫煙用具
2 引用商標1(審判請求人の登録商標)
3 引用商標2(審判請求人の登録商標)
4 使用商標(周知・著名)
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由(要旨)
1 商標法4条1項第15号
(1)本件商標の一体性
本件商標の文字は、統一感のある書体をもって一連に書され、外観上まとまりよく一体的に表されているばかりでなく、これより生ずる「チャッカボー」の称呼も無理なく一気に称呼し得るものである。
(2) 使用商標の著名性
請求人は、1985年に販売を開始し、1992年から2003年までに毎年1000万本を優に超え、発売開始から2013年4月まで、日本国内で累計約2億9千万本が販売された。また、テレビ、雑誌等により広告をしてきた。これによって、使用商標は、著名化している。
(3)本件商標と使用商標との出所混同のおそれ
本件商標は、外観上まとまりよく一体的に表示されているばかりでなく、その構成中「チャッカ」の文字部分は、使用に係る商品「点火棒」との関係から、「着火」の意味を想起させることから、出所識別標識としての機能が強いと認められない。したがって、本件商標は、「チャッカボー」の一連の称呼のみを生ずるものであって、「チャッカ」の称呼は生じない。
一方、使用商標は、外観上バランスよく一体的に表されているものであり、構成全体をもって「チャッカマン」と称呼されて需要者の間に広く認識されていた。したがって、使用商標は、「チャッカマン」の一連の称呼のみを生ずる。
したがって、両商標は、称呼上混同するおそれはない。また、外観上および観念上も混同を生ずるおそれはない。
本件商標の指定商品と使用商標の商品とが、その主たる需要者を一般の消費者とするものであり、両者の需要者が共通することを考慮しても、商品の出所について誤認、混同を生じさせるおそれがある商標であるとはいえないし、本件商標が、請求人の使用商標の有する顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希客化(いわゆるダイリューション)を招く結果を生ずるおそれがあるとまでいうことはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条1項第10号
本件商標と使用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。したがって、商標法第第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第11号
本件商標は、引用商標1及び2(登録商標)とも非類似の商標である。したがって、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号
本件商標と使用商標とは、互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。してみると、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標であるということはできない。したがって、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
平成28.7.29発行「審決」より 2016.8.12 ANDO