商標関連情報
映画「007」 「賃貸007」は剽窃・不正の利益獲得の目的
登録異議申立
関連規程 商標法第4条第1項第19号
事案の概要
「ピストルを持った人物のシルエットの図形」と「賃貸007の文字」からなる商標が、不動産に関する役務について商標登録された。これに対し、映画「007シリーズ」について、MGM社と著作権を共有し、様々な企業とタイアップして商品・役務に使用している者が、この登録の取消を求めて、異議申立を行った。
本件商標
指定役務
第36類 不動産の賃貸に関する情報の提供、建物・土地の管理・売買の代理又は媒介 等
引用商標1
007
引用商標2
結 論
本件商標の商標登録を取り消す。
理由(要旨)
1 引用商標の著名性について
(1)異議申立人は、イギリスの作家イアン・フレミングによる長編スパイ小説を原作とする映画「007」に関する著作権を、米国のメトロ・ゴールドウイン・メイヤー社(MGM)と共同所有し、同映画に関する世界的な商品化権を単独で管理している米国企業である。
(2)上記のスパイ小説中の「カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)」(1953年著)の中で生み出された主人公「ジェームズ・ボンド」は、イギリス情報部のエース諜報員であり、「007」のコードネームを持ち、この「ジェームズ・ボンド」を主人公とした小説はシリ-ズ化され、多数の作品が出版された。
この小説シリーズは、1962年に映画化されたのを契機に、2012年までに50年間に23作品の映画が作成され、世界中で人気を博し、高い興業成績を残している。
我が国においては、「007」の文字を含んだタイトルで上映され、一連の映画作品は「007シリーズ」として広く一般に愛好されにんきを博している。
(3)映画「007シリーズ」では、多数の企業がタイアップして、タイアップキャンペーン及びタイアップ商品に引用商標が使用されることが多い。
(4)映画「007シリーズ」では、ほとんどの作品の冒頭に「構えられた銃口の中にジェームズ・ボンドのシルエットが登場するシーン」が映されていること等から、「007」の文字に加えて、ピストルのシルエットが使用されると、両者の強い関連性から映画「007シリーズ」を連想・想起させるものといえる。
(5)以上の状況から、引用商標は、申立人のが著作権をMGM社と共同所有する著名な映画「007シリーズ」を想起させ、かつ、申立人が単独で管理する同映画シリーズに関する商品化事業に係る商品を表示する標章として需要者の間に広く認識されていたというべきである。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
本願商標と引用商標とは、外観及び称呼において相違するものの、観念において、「映画『007シリーズ』を共通にする類似する商標である。
引用商標は、日本国内における需要者の間に広く認識されているものであるところ、本願商標の構成中には、「007」の文字だけでなく、人物がピストルを構えているシルエット図形を含むものである。
本件商標は、映画「007シリーズ」及び引用商標を意識したうえで、引用商標の化体した名声、信用、顧客吸引力にただ乗りして、剽窃的に、その構成中に「007」の文字及び人物がピストルを構えているシルエット図形を採択し、不正の利益を得る目的、すなわち不正の目的をもって使用するものであるといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
平成28.9.30発行「審決」より 2016、10.24 ANDO