商標関連情報
「養命酒」と「宮古養命草」(サプリメント)は、混同する
審決取消請求事件
主な関連規程 商標法第4条第1項第15号
事案の概要
商標「宮古養命草」が「サプリメント」に商標登録された。これに対して、「養命酒」の商標を薬用酒に、また、「養命水」の商標を使用したミネラルウォーターをも販売している者が、商標登録無効審判を提起したが、特許庁は、次の理由でこの審判請求は成り立たないと審決した。
(理由の要旨)
本件商標は、ややデザイン化した「養命酒」の文字を横書きしてなる商標(引用商標A)とは、周知著名であるということができても、十分に区別し得る差異を有するものであるから、出所の混同を生じることがない。また、ややデザイン化した「養命」の文字からなる商標(引用商標B)とは、非類似であるから、原告の商品を表すものである と認識されるとしても、出所の混同を生じるおそれがあるということはできない。
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではない。
審判請求人は、この審決に対して、審決の取消を求めて知的高等裁判所に訴えを提起し、審決取消の判決があったので、さらに審判において審理された。
本件商標
宮古養命草(標準文字)
指定商品
第5類 「サプリメント」
引用商標(請求人が使用する商標)
A
B
引用商標を使用している商品
薬用酒(養命酒)、ミネラルウオ-ター(養命)
結 論
本件商標の登録を無効とする。
理由(要旨)
(1)「養命酒」は、慶長7年(1602年)に、信州伊那の者が、原告商品の起源とされる「薬酒」を創造し、これに「養命酒」と名付けたものであり、以来、「養命酒」は、現在に至るまで400年にわたり請求人商品に使用されてきた。そして、大正12年には、商品の製造・販売を会社組織に改め、全国に販路をひろげ、昭和5年頃から、「養命酒」を表示した商品について新聞・雑誌の広告、テレビコマーシャルによって広く一般に宣伝広告を行い、高い知名度を獲得した。また、「養命酒(養命)」の語は、請求人が創造したユニークな造語ということができる。そして、「養命酒」の構成中「酒」の部分は、「薬酒」を表すものといえるから、「養命」の語もユニークな商標として広く知られていると認められる。
(2)本件商標中の「宮古」は、地名を表す語であり、また、語尾の「草」は「サプリメント」との関係において原料の「草」又は「薬草」を表すものであるから、「養命」の文字部分が、本件商標の要部と認められる。
(3)以上の事実によれば、「養命酒」及び「養命」の語は、請求人商品の商標として周知著名であり、我が国において、ユニークな造語として広く一般需要者に認識されていたことからすると、「養命酒」及び「養命」の語は、商品の出所識別標識として強く支配的印象を与えるものであり、請求人は「養命酒」のほか、「養命水」の商標を使用したミネラルウォーターやサプリメント等を販売していること、また、本件商標の指定商品「サプリメント」と請求人商品は、いずれも広い意味でセルフメディケーションの用途で飲用、食用される商品であり、需要者を共通にする。
(4)以上の事実によれば、本件商標を指定商品(サプリメント)に使用した場合、これに接した取引者、需要者は、請求人の出所の係るものであると誤信するか、少なくとも、同一の表示による商品化事業を営むグループの属する関係等にある営業上の業務に係る商品であると誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
平成28.10.28発行「審決」より 2016.11.30 ANDO