商標関連情報
「空海」 汚水浄化装置に使用しても、公序良俗に反しない
拒絶査定不服審判
主な関連規程 商標法第4条第1項第7号
事案の概要
第11類 汚水浄化装置等を指定商品として、商標「KUHKAI/空 海」(下記)を登録出願したところ、次の理由で拒絶査定された。
(拒絶理由の要旨)
『空海』の文字は、『平安初期の僧。日本真言宗の開祖。』として有名な歴史上の人物を表すものであって、平成26年は、空海が四国霊場を開いた開創200年に当たり、各種イベントが開催され、平成27年も四国、和歌山、・高野山等各地でいろいろな行事が行われ、空海ゆかりの地ばかりでなく国内において『空海』の名が広がりを見せようとしている状況である。そうすると、本願商標を一法人にすぎない出願人が商標として採択し、使用することは、社会公共の秩序を害するおそれがあり穏当でない。したがって本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
出願人は、この拒絶査定の取消しを求めて、審判を提起した。
本件商標
指定商品
第11類 汚水浄化装置、汚水浄化槽、し尿処理槽、浄水装置 等
結 論
原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。
理由(要旨)
「空海」は、周知・著名な歴史上の人物名であって、我が国の国民に広く敬愛されている。
そして、該名称は、近年、各霊場の開創1200年記念行事への注目を好機として、地方公共団体や公益的な機関によって、地域振興やゆかりの地との関係を謳う食品等の土産物、真言宗に関連した仏具、及び書道に関連した筆等の商品にその名称が利用されている。
しかし、本件商標の指定商品は、地域振興や観光振興において、「空海」の名称が利用されるイベント、土産物、仏具及び筆等の商品又は役務と密接な関係性を有するものとはいえない上、本件商品を取り扱う分野においては、請求人以外に、「空海」の名称が利用されている事実を見いだすことはできない。
「空海」が周知著名な歴史上の人物であるとしても、本件商標は、その指定商品に使用した場合には、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するとはいえない。
さらに、審判請求人が「空海」とは何ら関連性のない企業であるとしても、本件商標の登録出願の経緯に、社会的相当性を欠くというべき事情も見いだし得ない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきものではない。
平成28.12.22発行「審決」より 2017.3.3 ANDO