商標関連情報
「謙信」を含む商標の登録は、社会公共の利益を妨げる。
拒絶査定不服審判
主な関連規程 商標法第4条第1項第7号
事案の概要
「米」について商標「謙信米」を登録出願したところ、審査では、上杉謙信と関係のない者が本件商標を独占して使用することは、上杉謙信に対する国民、上越市の地域住民の心情を害するおそれがある他、上越市での地域興しや観光事業の活動を阻害するおそれがあり、社会公共の利益に反する旨の理由で拒絶査定した。これに対して、出願人は、この査定の取消しを求めて審判を請求し、次のように主張した。
(出願人の主張の要旨)
出願人自身は上杉謙信と関係はないが、上越市の住民として長年事業を営み、「米」を毎年生産している者であり、「謙信米」を付した地産米が市場に出回ることにより、上越市の地域興しや観光事業の活動に協力、寄与するものと思い、本件商標を登録出願しており、歴史上の人物の名称を使用した公益的な施策等に便乗する思いはない。
本件商標
謙信米(標準文字)
指定商品
米
結論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由(要旨)
本件商標の構成中、「謙信」の文字は、我が国において広く知られている歴史上の人物名であって、ゆかりの地においては今なお多くの人から敬愛の念をもって親しまれている。
そして、「謙信」に関連する祭りが開催され、また、「謙信」の文字(名称)は、市や商工会議所等が行う公共性を有する各施設、地域振興、観光振興のほか、各種の商品又は役務の提供等に広く活用されている。
これらの実情を総合してみれば、「謙信」の文字を含む本件商標を、審判請求人の商標として登録することは、「謙信」の文字(名称)を活用した公共性を有する各種施策、地域振興、観光振興等の遂行を阻害するおそれがあり、ゆかりの地における各種商品や役務等を取り扱う多数の事業者等の円滑な商取引を阻害し、ひいては社会公共の妨げになるおそれがあるものというべきである。
平成29.1.27発行「審決」より 2017・3・3 ANDO