商標関連情報
スイス国の国旗 十字図形を配した図形が類似しないとして登録
登録異議申立
主な関連規程 商標法第4条第1項第1号,同項第7号,同第16号
事案の概要
丸みのある下底が短い台形を灰色で配し、その中に下底の短い台形を黒色で配し、その中に、十字図形を、外側の灰色と同じ色で配した構成からなる図形(下記)が時計等について商標登録された。これに対して、スイスの公益を代表して「Switzerland」及び「Swiss]の表示の違法な使用行為を取り締まることを任務とする者が、その登録の取消を求めて異議の申立を行い、次のように主張した。
(異議申し立ての理由の要旨)
(1)商標法第4条第1項第1号について
本件商標に接した取引者、消費者は「黒の背景と十字の部分」からスイスの国旗を想起する。本件商標は、スイスの国旗とその外観が類似するから、商標法第4条第1項第1号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、スイスの国旗を想起するものであり、スイス製以外の指定商品に本件商標が使用された場合、取引者、消費者は指定商品がスイス製であると品質について誤認する。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第7号について
ア 不正競争防止法第16条第1項は外国の国旗等の商業上の使用を禁ずるものである。本件商標は、スイス国旗と類似する。本件商標の使用は、商業上の使用に該当するおそれがある。よって、本件商標は、同規程に該当する。
イ 不当景品類及び不当表示防止法第4条第1項第3号は不当な表示を禁止している。本件商標は、同法の「商品の原産国に関する不当な表示」に該当するおそれがある。
ウ スイス国は国を挙げて、スイス製時計のブランドの保護を行っており、本件商標を時計に使用した場合には、スイス国の国益を害することになるから、商標法第1項第7号に該当する。
本件商標
指定商品
第 9類 電気通信機械器具 等
第14類 貴金属、身飾品、宝飾品、腕時計、時計等
引用標章(スイス国の国旗)
結 論
本件商標の登録を維持する。
理由(要旨)
1 商標法第4条第1項第1号について
スイス国の国旗は、赤色の矩形内に、白十字うを配してなるものである。外国の国旗における三色旗の場合には、色彩の違いによって、別の国の国旗を表すことになるから、国旗における色彩は、国旗を表示する重要な要素というべきである。
本件商標は、特徴のある二つの台形を組み合わせた図形内に、十字図形を、黒色と灰色で表されている図形であり、具体的に何を表したか直ちに認識し得ないものであり、国旗における色彩の重要性をあわせ鑑みれば、これから、スイス国の国旗を連想、想起するものとはいえない。そうすると、本件商標は、外国の国旗と同一又は類似の商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第1号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第16号について
本件商標は、スイスの国旗を連想・想起するものとはいえない。本件商標は、その構成中に「SWISS」、「スイス」等の文字がないことからも、その商品がスイス製であるかのごとく、本件商標を指定商品に使用してもその商品がスイス製であるかのごとく、商品の品質の誤認を生じさせるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号について
スイス法令は、「Swiss」、「Switzerland」、「Swiss Product」等の表示、また、「Swiss movement」及び「Swiss」等の文字と「style」、「type」等の文字との組合せの表示について、規程されたものであり、国旗の使用について規程されているものといえないばかりか、本件商標は、スイスの国旗を連想、想起させるものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
平成29.2.24発行「審決」より 2017.4.7 ANDO