商標関連情報
「シャンパン」(ぶどう酒) 「シャンパークリング」は国際信義違反
事件の表示 無効2016-89035
確 定 日 2016.12.26
主な関連規程 商標法第4条第1項第7号
事案の概要
「シャンパークリング」なる商標が第33類 日本主酒,洋酒, 果実酒等について商標登録された。これに対して、フランス国 の法人 CIVC(注1)及びINAO(注2)が、この商標は、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」という表示へのただのり及び希釈化を生じさせるおそれがあり、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものでので、商標法第4条第1項第7号に該当し、登録は無効にすべきである旨主張して、審判を請求した。
(注1)CIVC : シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者を統率する法定団体。
(注2)INAO : 原産地名称の使用の権利を与える生産区域の限定やぶどうの品種等の生産条件の決定及び原産地統制名称の保護促進を行っている政府機関。
本件商標
シャンパークリング (標準文字)
指定商品
第33類 日本酒、洋酒、果実酒 等
引用商標
「CHAMPAGNE」(シャンパン法で作られた発泡性ぶどう酒の原産地統制名称)
結 論
本件商標の登録を無効とする。
理由(要旨)
1 「CHAMPAGNE」の周知性
「CHAMPAGNE」は、フランス北東部の地名であるとともに、1935年(昭和10年)に制定され、INAOによって運用されている同国の原産地統制呼称法に基づく統制の下に、同地方で収穫されたピノ・ノワール、ピノ・ムーニエ及びシャルドネの3種のぶどうのみを原料とし、シャンパン法といわれる伝統的な製法で作られた発泡性ぶとう酒にのみ使用を許された原産地名称と認められる。
この原産地名称である「CHAMPAGNE」は、INAOとCIVCにより、その使用が管理、統制されている。
我が国においては、「CHAMPAGNE」は、「シャンパン」と訳され、辞書類、雑誌や新聞等において、しばしば紹介されており、高品質で、かつ、希少価値のあるぶどう酒などとして広く販売されている。
そうすると、「シャンパン」我が国において、「フランスのシャンパーニュ地方及び同地方で作られる発泡性ぶどう酒」を意味する語として、一般需要者の間に広く知られていた。
2 反国際信義性
(1)本件商標の商標権者は、主として梅酒等のアルコール飲料を製造・販売する業者であり、「発泡性の梅酒」について使用しているところ、その広告においては、「ワイン感覚のスパークリング梅酒」等の文字やシャンパングラスと思しき絵図が容器に付されている画像が掲載されている。これらのことに加えて、「シャンパン」の語が、上記のように、一般需要者の間に広く知られていることを併せ考慮すると、本件商標は、その構成自体からすれば、造語の一種として看取、把握されるものではあるものの、「シャンパン」の語と「スパークリング」(ワイン)」の語とを掛け合わせたもの又はもじったものと理解、認識される場合も少なくない。
そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、「フランスのシャンパーニュ地方及び同地方で作られる発泡性ぶどう酒(スパークリング)」である「シャンパン」を連想、想起することも少なからずあるといえる。
(2)「CHAMPAGNE」は、シャンパーニュ地方のみならず、フランス国民の文化的所産というべきものになっている。
「シャンパン」を想起させる本件商標をその指定商品について使用することは、シャンパーニュ地方のぶどう生産者やぶどう酒製造業者らの利益を代表する請求人らのみならず、長年にわたり、法律に基づき、原産地統制名称である「CHAMPAGNE」の保護を行ってきたフランス国民の感情を害し、ひいては我が国とフランスとの友好関係にも影響を及ぼしかねないものであり、国際信義に反するものであって、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標であり、商標法第4条第1項第7号に該当する。
平成29.2.24発行「審決」より 2017.4.21 ANDO