商標関連情報
「横向き鳥様図形」(美津濃ハウスマーク) 幾何図形(被服等)は相紛れる
種 別 知財高裁第1部 審決取消請求事件
事件番号 平成28年(行ケ)10262
判決言渡 平成29年9月13日
主な関連規程 商標法第4条第1項第15号
事案の概要
下記(本件商標)が被服等を指定商品として国際商標登録された。これに対して、横向き鳥様図形(引用商標)をハウスマークとして運動用具及びその関連商品に使用し、著名となっている者が、この引用商標と混同を生ずるおそれがあることを理由として登録無効の審判(無効2015-680001号)を提起したが、本件商標と引用商標とは、相違の程度の高い別異の商標であるため混同を生ずるおそれはないものとして、審判の請求は棄却された。
審判請求人は、この審決の取消しを求めて、訴えを提起した。
本件商標
指定商品
第18類 通学用かばん 等
第25類 被服 等
第28類 体操用具 等
引用商標
指定商品
第18類 かばん類 等
第25類 被服、運動用特殊衣服 等
第28類 運動用具 等
その他多くの区分
主 文
特許庁が無効2015-680001号事件について平成28年11月2日にした審決を取り消す。
裁判所の判断
ア 本件商標と引用商標の異同
本件商標と引用商標とは,構成各部分において、底部における曲線と直線等の差異等に加えて,図形の内部における白抜きの逆三角形部分の有無を考慮すると,直接対比した場合の視覚的印象は別異のものということもできる。
しかしながら,本件商標及び引用商標の全体的な構成をみると,いずれもその全体の図柄として左端に比して右端が高くなるように右上方に傾斜しており,本件商標の全体的な配置や輪郭等については,引用商標(特に上側部分)と比較的高い類似性を示すものであるということができる。
イ 引用商標の周知著名性
引用商標は,昭和58年にスポーツシューズについて使用が開始され、平成10年には原告のハウスマークとして使用されており,平成19年以降には,原告の製品全てに付されるようになった。その売上高は,平成20年度以降,毎年合計で1000億円以上に達している。昭和26年から平成26年にかけて,引用商標を付した商品は,スポーツイベントで使用され,多くのメディアにおいて紹介され,宣伝広告されてきた。スポーツ用品に関連する商品の需要者の間に広く認識されていたものと認められる。
ウ 商標の使用形態等における取引の実情
本件商標が、その指定商品である被服,スポーツジャージー,靴下,帽子,運動靴などの商品分野において使用される場合には,ワンポイントマークとして表示される可能性が高い。
ワンポイントマークは,比較的小さいものであるから、そのような態様で表示された商標の構成は視認し難い場合がある。また、マーク自体に詳細な図柄を表現することは容易であるとはいえないから、スポーツシャツ等に刺繍やプリントなどを施すときは、むしろその図形の輪郭全体が見る者の注意を惹き,内側における差異が目立たなくなることが十分に考えられる。
本件商標は,その全体的な配置や輪郭等が引用商標と比較的類似していることから,ワンポイントマークとして使用された場合などに、より類似して認識されるとみるのが相当である。
エ 混同を生ずるおそれについて
本件商標と引用商標は,全体的な構図として,配置や輪郭等の基本的構成を共通にするものであり,本件商標が使用される商品である被服等の商品の主たる需要者が,商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たないものを含む一般の消費者であり,商品の購入に際して払われる注意力はさほど高いものとはいえないなどの実情や,引用商標が我が国おいて高い周知著名性を有していることなどを考慮すると,本件商標が、特にその指定商品にワンポイントマークとして使用された場合などには、これに接した需要者(一般消費者)は,それが引用商標と全体的な配置や輪郭等が類似する図形であることに着目し,細部の形状(内側における差異等)などの差異に気付かないおそれがある。
本願商標の指定商品には,引用商標の著名性が需要者に認識されているスポーツ用品(運動用具)関連の商品を含むものであるから,本件商標をその指定商品に使用した場合には,当該商品が原告又は原告のグループの属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
オ 被告の主張について
被告は,本件商標と引用商標とは,看者に与える印象が大きく異なるというのが相当であるから,外観において混同を生ずるおそれはない旨主張する。
しかし,商標法第4条第1項第15号該当性の判断は、他人の営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれが存するかどうかを問題とするものであって,他人の商標等に類似するかどうかは,上記判断における考慮要素の一つにすぎない。被告が主張する差異は、本件商標の構成において格別の出所識別機能を発揮するものとまでいえないし,単に本件商標と引用商標の外観上の類否のみによって,混同を生じるおそれがあるか否かを判断することはできない。
カ 以上によれば,本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当しない旨の審決の判断は誤りである。
「裁判例情報」より 2019.1.12 ANDO