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商標関連情報

審決

緑茶飲料「伊右衛門」の容器 緑色の地色に小さな赤色の図形は、ありふれている

種  別   判定
判定請求番号 判定2017-600012
確 定 日  平成29年(2017)8月3日

主な関連条項 商標法第27条、同第28条

事案の概要
請求人は、緑色の縦長長方形の中央やや左側に赤色の小さな縦長長方形を配した図形であって、横縞のように視認される濃淡が付けられているもの(下記「本件商標」)を、「茶飲料」を指定商品として商標登録していた。
一方、被請求人は、栓部を除いた本体部分は、上下から中央に向かって黄緑色から緑色が濃くなるように濃淡のある彩色が施され、左下には赤色の遠目からみると長方形と思しき図形を有し、また、「京都」、「「福寿園」、「伊右衛門」、「茶」、「KYOTO」、「FUKUJUEN」、「SINCE1790」の文字要素を有している標章(下記「イ号標章」)が付された茶飲料を、平成29年(2017年)3月7日から全国で販売する予定である。
請求人は、本件商標とイ号標章とが茶飲料に使用された場合には、商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれがあるから、両者は類似すると主張し、イ号標章は、本件商標の商標権の範囲に属すると主張した。請求人は、両者が類似する理由をつぎのように述べた。
(両商標が類似すると主張する理由の要旨)
本件商標とイ号標章とを対比すると、本件商標の大半を占める領域に彩色された緑色とイ号標章中の本体部分の約8割程度を占める範囲において着色された緑色は、近似した色合いであり、また、両者は、竹を連想させる色彩ないし模様であり、赤色の図形を一部に有する構成においても共通する。
我々の日常経験によれば、一般の取引者、需要者は、必ずしも商標の構成を細部にわたって正確に記憶し、想起するものとは限らず、商標全体の主たる印象によって商品の出所を識別する場合も少なくない(東京高裁昭和51年(行ケ)第139号)。「茶飲料」が、廉価な価格で販売される日用飲料品であり、需要者は、気軽に購入するものであることを考慮すれば、本件商標と引用標章とは、文字の有無において差異を有するとしても、両者の構成が上記のように共通するため、全体の印象は、極めて近似する。

本件商標

JPJ6429600012_000001

指定商品 第30類 「茶、茶飲料」

イ号標章

JPJ6429600012_000002

使用に係る商品 茶飲料

結  論
商品「茶飲料」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。

理  由(要旨)
1 本件商標について
本件商標は、その構成態様からは、特定の称呼及び観念を生じるとは認められない。
2 イ号標章について
イ号標章は、商品「茶飲料」について使用するものであるところ、緑色の「茶」の文字を内包する白色の円形、白色の「京都」の文字を内包する赤色の小さな縦長長方形並びに白色の「KYOTO」及び「SINCE1790」の文字は、自他商品の識別標識として機能し得ないか、その機能が極めて弱い。
また、「緑茶飲料」を取扱う業界においては、商品容器に付すラベルに地色を緑色とし、かつ、そのラベル上に、赤色の小さな図形を配することが、しばしば見受けられるところである。
そうすると、イ号標章は、略中央部に僅かなくびれのある商品「茶飲料」のペットボトル様の容器であって、その胴部に、各種の文字や図形が配された上下端部にグラデーションが施された地色を緑色とするラベルが付されているものであり、その構成中、白色の「伊右衛門」、「福寿園」及び「FUKUJUEN」の文字、緑色の「嘉壽」の文字を内包する赤色の小さなひょうたん様の図形が、取引者、需要者に対し、強く支配的な印象を与え、自他商品の識別標識として認識されるといえ、緑色のラベル正面及びそのラベル正面にある緑色の「嘉壽」の文字を内包する赤色の小さなひょうたん様の図形部分のみが分離、抽出されて取引者、需要者の注意をひくことはないというべきである。
してみれば、イ号標章は、その構成中「伊右衛門」の文字から「イエモン」の称呼を生じ、「福寿園」および「FUKUJUEN」の文字から、「フクジュエン」の称呼が生じ、「嘉壽」の文字を内包する赤色の小さなひょうたん様の図形から「カジュ」の称呼を生じるものであり、また、特定の観念を生じない。
3 本件商標とイ号標章との類否について
本件商標とイ号標章とを比較すると、前者は図形からなるものであるのに対し、後者は商品容器からなるものであるから、その構成全体において、外観上、容易に区別し得るものである。
また、本件商標は、特定の称呼及び観念を生じないものであるから、イ号商標と比較しても、称呼上及び観念上相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標とイ号標章とは、非類似のものというべきである。

平成29.9.29発行「審決」より  2017.11.15 ANDO

 

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