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商標関連情報

審決

「スマイリーフェイス」(図形) 著作権抵触の商標でも、公序良俗規程に当たらない

審判番号   無効2008-890070 他8件   審理の併合
確 定 日 平成21年(2017)9月28日

主な関連規程 商標法第4条第1項第7号,同項第15号,同項第19号,同法第3条1項第6号、同法第46条第1項、同法第47条第1項

事案の概要
「スマイリーフェイス」(図形)が9件登録された。これに対して、グラフィックデザイナー 故ハーベイ・ボール(Harvey Ball)氏の息子が設立した日本法人が、著作権を有することを主張してこれら商標の登録は公序良俗に反すること、他人の商品と混同を生ずるおそれがあること、不正な目的をもってなされたものであること、一種のキャラクターであって自他商品の識別力を有しないことを主張して、登録無効審判を提起した。

本件商標 1

ほんけん1無題

指定商品
第18類「かばん類」等

本件商標 2

無題

指定商品
第12類「船舶」等,第28類「遊戯用器具」,第14類「貴金属」等,第18類「皮革」等,第30類「コーヒー豆」等

本件商標 3

JPT_004383223_000001

指定商品
第34類「たばこ」等,第30類「菓子及びパン」,第21類「ガラス基礎製品」等

引用図形

無題引用図形

結  論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由の要旨
1 商標法第4条第1項第7号(公序良俗違反)該当性について
(1)著作権との関係
ア 請求人の主張(要旨)
引用商標は、ハーベイ・ボール氏によって、創作・著作され公表されたものである。それを何ら関係のない一個人が、承諾なく設定要録を受けることは、公正な商取引秩序を乱し、国際的な商取引秩序、国際道徳にも反し、また、商取引における公正な取引秩序を乱すものであり、社会一般の道徳観念に反する。
イ 審判の判断
出願された図形からなる商標について、その使用が著作権と抵触するかどうかを判断するためには、出願された商標がより先行の著作物を調査し、二次的著作物である場合には、新たに付与された創作的部分の内容及び形式を覚知させるに足りるものであるかどうか、このような創作的部分の本質的特徴を直接感得することができるものであるかどうかについて判断することが必要である。
著作権は、著作物を創作することのみによって直ちに生じ、また、発行されていないものも多いから、特許庁の保有する資料により先行する著作物を調査することは困難である。
また、特許庁は、狭義の工業所有権の専門官庁であって、著作権の専門官庁ではないから、上記のような著作権と抵触するかどうかの判断を商標の審査官が行うことには、多大の困難が伴う。
また、特許庁審査官に著作権と抵触するかどうかを調査及び認定の上で当該商標の査定を行うことは、相当な困難が伴うのであって、特許庁の審査官には極めて多数の商標登録出願を迅速に処理すべきことが要請されている事務処理上著しい妨げになることは明らかであるから、商標法第4条第1項第7号が、商標審査官にこのような調査等の義務を課していると解することはできない。
してみれば、その使用が他人の著作権と抵触する商標であっても、商標法第4条第1項第7号に規定する商標に当たらないと解するのが相当である。
(2)国際信義との関係
ア 請求人の主張(要旨)
本件商標は、ハーベイ・ボール氏の息子チャールス・ボール氏が代表を務める『ハーベイ・ボール・ワールドスマイル財団』などを通じて、慈善活動も行っているから、これを一個人に独占的な権利として保有されることは、米国政府に対する関係で、国際信義に反する。
イ 審判の判断
請求人の提出した証拠によっては、ハーベイ・ボール財団については、米国及び我が国において一財団として活動の事実があるというにすぎず、本件各商標が、ハーベイ・ボール財団の行う慈善事業を表示するシンボルマークとして知られていると認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第15号(出所の混同)該当性について
ア 請求人の主張(要旨)
本件商標は、ハーベイ・ボール財団及び及びその関係団体等に係る商品等を表示するものとして、我が国及び外国におけるキャラクター・マーチャンダイジング業界に関係する業者(一次需要者)や商品の購入者(二次需要者)の間に広く認識されている。
したがって、本件各商標をその指定商品に使用しても、他人の業務に係る商標と混同を生ずるおそれがある。
イ 審判の判断
商標法第47条は、商標登録が第4条第1項第15号の規定に違反してされたとき(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない旨を規定している。
本件各商標が、商標法第4条第1項第7号に違反したものでなく(上記1)、また、商標登録し、使用料を取得することが、直ちに、不正の目的に当たるということはできない。
本件審判の請求は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後(平成20年9月9日~同17日)になされたものである。
してみれば、商標法第4条第1項第15号に該当する旨の請求人の主張は、不適法である。
(注)
本件各商標権の設定の登録の日 平成10年3月13日~同14年11月29日
審判請求日 平成20年9月9日~平成20年9月17日

3 商標法第4条第1項第19号(不正の目的)該当性について
ア 請求人の主張(要旨)
引用商標は、我が国及び外国におけるキャラクター・マーチャンダイジングに関係する業者(一次需要者)や商品の購入者(二次需要者)の間に広く認識されている。したがって、本件各商標を指定商品に使用するとき、混同を生ずるおそれがある。また、本件各商標は、被請求人によって不正の目的をもってライセンス目的で使用されている。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
イ 審判の判断
商標法が使用許諾制度を採用していることからすれば、他人に使用権を許諾し、使用料を取得することが、直ちに、不正の目的に当たるということはできない。
また、引用商標が、ハーベイ・ボール財団及びその関係者の業務に係る商品を表示する商標として広く知られているとは認められない。
したがって、本件各登録商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 商標法第3条第1項第6号(著名な公益事業の標章と類似)該当性について
商標法第47条は、商標登録が第3条規定に違反してされたときは、方法46条第1項の審判は、商標権設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない旨を規定している。
本件審判の請求は、商標権の設定登録の日から5年を経過した後になされたものである。
してみれば、当規定に該当するとの請求人の主張は、不適法である。
5 むすび
本件各商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号、同第19号並びに第3条第1項第6号に違反して登録したものでなく、同法第46条第1項の規定により無効とすることはできない。

平成29.7.28発行「審決」より  2017.9.6 ANDO

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